ハスノハカシパンは答えを知らない
あとがき

何気ない会話や、ふとした瞬間に交わした言葉が、思いがけず記憶に残り続けることがある。

そのときは特別だと思わなかったのに、時間が経ってから何度も思い返してしまう。聞いておけばよかったと思うほどの後悔ではないけれど、だからといって、きれいさっぱり忘れられるわけでもない。

この物語では、くらげの死後についての疑問をきっかけに、知ることと知らないことの境目を描きました。ハスノハカシパンの正体は、調べればわかる。けれど、あの日の先輩が何を考えていたのかは、もう確かめようがありません。

答えがわかることと、疑問が解消されることは、必ずしも同じではないのだと思います。ひとつの謎が解けたことで、かえって別の謎が深まることもある。目の前の出来事に夢中だったあの頃には気づかなかったことが、時間を経て、思い出の中で少しずつ違う意味を持ち始めることもあります。

そんな、後悔と呼ぶには小さく、忘れるには少しだけ引っかかるような心残りを、人はどうやって自分の中で消化していくのでしょうか。

無理に答えを出す必要も、きれいな思い出に変える必要もないのかもしれません。ただ、ときどき思い出しては、あのとき聞いておけばよかったな、と考える。そんな曖昧なままの感情も、誰かと過ごした時間の一部なのだと思います。
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