……もう、好き、じゃありません!

Ⅷ

「……これからは、俺が追いかけるから」

拓海のその言葉が、頭の中で何度も反芻される。
自分の部屋のベッドに突っ伏した私は、真っ赤になった顔を枕に押し付けてバタバタと足をジタバタさせた。
(ずるい……あんなこと言われたら、またすぐ好きになっちゃうじゃない……!)

「もう好きじゃない」なんて、自分を偽って作り上げた嘘の防壁は、あのときの拓海の真剣な瞳の前ではあまりにも脆く崩れ去っていた。本当はずっと嬉しくて、ずっと待ち望んでいた言葉だったのに。素直になれなかった自分がちょっぴりもどかしい。

その頃、自室の机に向かう拓海もまた、落ち着かない様子でノートにペンを走らせては止めていた。
「……なんて言えばよかったんだよ、あんなの」
ふっと自嘲気味に笑いながらも、拓海の手は、あの放課後で震えていた夏音の小さな手を思い出していた。
当たり前だと思っていた日常が、もし本当に夏音の「好きじゃない」で終わっていたら――そう想像するだけで、胸の奥が冷たく引き裂かれるような恐怖があった。

(もう、お前を遠くに行かせねえからな)
窓の外の夜空を見上げながら、拓海は心の中で強く誓った。
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