……もう、好き、じゃありません!
Ⅸ
翌朝、学校に向かう足取りは、いつになく軽やかだった。
いや、むしろ少し緊張して、心臓がうるさいくらいに鳴り響いている。
「おはよう、夏音」
昇降口の前で待っていたのは、やっぱり拓海だった。以前のような何気ない挨拶なのに、その声のトーンも、向けられる視線も、どこか特別に感じられてしまう。
「……おはよ、拓海くん」
自然と苗字ではなく名前で呼んでしまった私に、拓海はふっと柔らかく、少し照れくさそうな笑みを浮かべた。
「……今日、放課後も裏庭な」
「えっ、また?」
「うん。言いたいこと、まだちゃんと全部言えてないから」
授業中も、先生の声がなんだか遠くに聞こえるくらい、頭の中は放課後のことでいっぱいだった。
そしてチャイムが鳴り響き、足早に向かった裏庭の木陰。待っていてくれた拓海の背中が、なんだか以前より少しだけ頼もしく大きく見えた。
「待たせた?」
「ううん、俺も今来たところ」
振り返った拓海は、まっすぐに私を見つめ、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
「あのさ……昨日は勢いで言っちゃったけど」
拓海は少し息を整え、真っ赤になりそうなのを必死に堪えるような顔で、私に手を伸ばした。その大きな手が、私の小さな手をそっと包み込む。
「ずっと、幼馴染だからって甘えてた。お前が俺を好きなのも、そばにいてくれるのも、全部当たり前だと思ってた。……でも、違ったんだよ」
「拓海くん……」
「お前が『好きじゃない』って言ったとき、世界から色が消えたみたいに焦った。……俺、本当は、ずっと前から夏音のことが好きだったんだと思う。気づくのが遅くて、ごめん」
溢れそうになる涙を堪えきれず、私はぐっと下を向いた。
「……馬鹿。そんなの、反則だよ……」
「うん、馬鹿でごめん。だからさ……」
拓海は優しく私のあごを持ち上げ、まっすぐな瞳で私をとらえた。
「これからは、俺にちゃんと好きにさせて。……夏音、俺と付き合ってください」
いや、むしろ少し緊張して、心臓がうるさいくらいに鳴り響いている。
「おはよう、夏音」
昇降口の前で待っていたのは、やっぱり拓海だった。以前のような何気ない挨拶なのに、その声のトーンも、向けられる視線も、どこか特別に感じられてしまう。
「……おはよ、拓海くん」
自然と苗字ではなく名前で呼んでしまった私に、拓海はふっと柔らかく、少し照れくさそうな笑みを浮かべた。
「……今日、放課後も裏庭な」
「えっ、また?」
「うん。言いたいこと、まだちゃんと全部言えてないから」
授業中も、先生の声がなんだか遠くに聞こえるくらい、頭の中は放課後のことでいっぱいだった。
そしてチャイムが鳴り響き、足早に向かった裏庭の木陰。待っていてくれた拓海の背中が、なんだか以前より少しだけ頼もしく大きく見えた。
「待たせた?」
「ううん、俺も今来たところ」
振り返った拓海は、まっすぐに私を見つめ、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
「あのさ……昨日は勢いで言っちゃったけど」
拓海は少し息を整え、真っ赤になりそうなのを必死に堪えるような顔で、私に手を伸ばした。その大きな手が、私の小さな手をそっと包み込む。
「ずっと、幼馴染だからって甘えてた。お前が俺を好きなのも、そばにいてくれるのも、全部当たり前だと思ってた。……でも、違ったんだよ」
「拓海くん……」
「お前が『好きじゃない』って言ったとき、世界から色が消えたみたいに焦った。……俺、本当は、ずっと前から夏音のことが好きだったんだと思う。気づくのが遅くて、ごめん」
溢れそうになる涙を堪えきれず、私はぐっと下を向いた。
「……馬鹿。そんなの、反則だよ……」
「うん、馬鹿でごめん。だからさ……」
拓海は優しく私のあごを持ち上げ、まっすぐな瞳で私をとらえた。
「これからは、俺にちゃんと好きにさせて。……夏音、俺と付き合ってください」