……もう、好き、じゃありません!

Ⅲ

それからも、拓海の距離感は縮まる一方だった。
席が離れているのに授業中になぜか視線を感じるし、部活の帰り道では「危ないから」と、いつの間にか並んで歩いている。
いつもの「夏音」呼びも、なぜか以前より近くに響く気がした。

「ねえ、本当にどうしたの? 最近の夏音、変だぞ」
その日も、校門を出たところで拓海に待ち伏せされていた。しつこく問うてくる彼の横顔は、昔よりもずっと大人っぽくなっていて、見つめているだけで胸が締め付けられる。

「変じゃない! ほっといてよ!」
「ほっとけるわけないだろ。……急にそっけなくなって、お前こそ変だよ」
拓海がふと足を止めた。私もつられて立ち止まる。
夕暮れの光の中、拓海はいつもより少し真面目な顔をして、まっすぐ私を見つめていた。

「お前が『好きじゃない』って言ってからさ……なんか、すげえ調子狂うんだよ」
「……え?」
「お前が俺を好きでいてくれるのが、当たり前になってたのかもな。……でも、急にそんなこと言われて、俺、お前が遠くに行っちゃいそうな気がして、全然落ち着かないんだよ」

それは、今まで聞いたこともない拓海の、少し焦ったような、本気の声だった。

胸が、大きく跳ねる。
(なにそれ……。私を振ったわけじゃないくせに、そんなこと言わないでよ)
こみ上げてくる熱を隠すように、私はギュッと拳を握りしめた。
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