……もう、好き、じゃありません!

Ⅱ

恋をやめると決めた日から、私は拓海を避けるようになった。
登下校も別々、廊下で会っても目を合わせず、挨拶さえしない。
自分から離れれば、この胸の痛みもいつか消えていくはずだった。

けれど、おかしい。離れようとすればするほど、なぜか拓海が――ついてくる。

ある日の放課後、買い物の帰りに、後ろから不意に声をかけられた。振り返ると、そこにはいつの間にか追いついてきた拓海が立っていた。
「おい、夏音」
「……なに? 私、急いでるんだけど」
「最近さ、俺避けてね?」
「避けてないし。気のせいだし」

早足で歩き出す私を、拓海はすんなりと追い抜いて、目の前に立ち塞がった。
「嘘つけ。朝も俺より早く行くし、帰りもすぐ消えるじゃん。……何か怒らせるようなことした?」

その真剣な瞳に、心臓が跳ねる。
(なんでそんなことするの……! もう忘れたいのに、そんなふうに気にかけるような顔しないでよ!)

「怒ってない! ただ、もう……今までみたいにベタベタするの、やめようと思っただけ!」
「ベタベタって……」
拓海は少し眉をひそめ、それからなぜか、ふっと意地悪そうに笑った。
「俺は、今まで通りがいいけどな」

「っ……勝手なこと言わないで!」
顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。本音では、胸の奥がキュンと嬉しさに鳴っている。でも、嬉しくない。こんな中途半端な優しさを向けられたら、諦めかけた気持ちがまた疼いてしまうから。
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