成立事項!
 


逃げたいのに逃げられない。

目を逸らしたいのに逸らせない。



体が、言うことを上手く聞いてくれない。



あさひは、どうやら決心したようで、小さく頷くと──


「私、朝に傘壊しちゃって、今ないんです。よかったら、生徒会長の傘に入れてもらえませんか‥っ!?」


と半ば叫ぶように言って、英を真っ直ぐに見る。

きっと、彼女の声は廊下にまで響いて、もしかしたら誰かに聞こえてしまっているかもしれない。

あの栖栗がそう思う程に大きく、そして力強かったのだ。


彼女の声と、決意は。


「‥‥職員玄関に名無しの置き傘と職員用の傘があるから、それ使っていいよ」


瞳が言っていたことと、同じことを言う英に、栖栗は少しだけ安心した。

術はどうあれ、断ったことに変わりはない。

いいぞいいぞ、と栖栗は下駄箱越しに英を応援する。


「わっ私は‥っ生徒会長の傘に入りたいんです‥!」


栖栗も、英も、目を見開いた。

彼女は引き下がらなかった。


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