遠き日の君
やることが無い...流石に病室で何もせず1ヶ月過ごしてると気が遠くなりそうだ。そんな事を思っていると同居人が突然質問を投げかけてきた。「あなたはどこにも行かないの?」普段ならすぐ返答出来ていただろうけれど、ここ1ヶ月の入院生活が災いして固まってしまった。それにまるで自分が行こうと思えばどこにでも行けるのにその勇気が無い。そんな自分を見透かされた様に感じた。なんて言えばいいか分からない。そんなそんな様子の俺を見て彼女は「ごめんなさい、説明不足でしたよね。あなたは近々退院するんですか?」「5ヶ月はここにいますよ」今度は少し食い気味に質問を返してしまった。困らせてしまっただろうかそんな不安に駆られたのも束の間、彼女は少し嬉しそうにしていた。そして「長いんですね」と一言。...気まずい空気が流れ出した時、彼女の方が耐えかねて「名前、なんて言うんですか?」と聞いてきた。「優しいに希望の希と書いて優希です。」我が事ながら正直言っていい名前と思う。けれど自分はそんな大層な名前を呼んでもらう様な人じゃない。目線を戻すと彼女は名前を聞くのを待っているように見える。名前を名乗り合ったことも無いような感じで。だからか「あなたはなんて名前ですか?」自然に言葉が出ていた。そして彼女は誇らしげに「絵里香です。私、この名前が大好きで。いいと思いませんか?」「いい名前ですね。」ごくごく普通の返事しか出来なかったそれでも彼女は嬉しそうにしている。不思議な子だな。
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