君だけに奏でる愛のカノン〜世界的ピアニストの甘い溺愛〜
「……僕の好みは花音かな」
「……照れるわ」
「花音、ここには僕たち二人だけだよ。自分の気持ちに素直でいていいんだ」
そうか。素直になっていいのか。
そこで私は、今まで素直になることにセーブをかけていたことに気が付いた。
「私……今まで無意識にだけど、素直に行動したらいけないと思っていたかも知れない」
「じゃあ、これからは素直に生きればいいね」
「そうね……。でも、難しい」
「どんなところが?」
「私の今の気持ちは……複雑なの」
「一つ一つほぐしていくのはどう?」
奏は、考え込む私の頭を撫でる。
「まず僕から先に一つ、素直になってみようかな」
「いいね。お手本を見せて」
「……花音はもう正式にフリーになったことだし、遠慮なく君を口説き落としたいと思っているんだけど……いいかな?」
「……」
「まだダメ?」
「ううん。違うの。……本当のことを言うと、口説き落とされるまでもなく、私はあなたに夢中」
奏は、驚いて目を瞬いたけれど、「Yes!」と小さく呟いた。
「じゃあ……どの辺が複雑なの?」
「私、ついこの間まで他の人を好きで結婚しようとしていたでしょう?」
「うん。そうだね。……それが、何?」
「何って……それなのに、すぐあなたを好きになって……いいのかしら?」
「……いいに決まってる」
「そうなの? ……すぐ別の人に惹かれて軽い女とか思われたりしないかしら?」
「誰に?」
「……あなたに」
奏が、自分の口を手で押さえて私を見る。
「花音……可愛い」
「え? 今のどこが可愛いの?」
「だって、僕にどう思われるかが心配だったんでしょう?」
「……そうね」
「結論から言うと、僕は君が軽い女だと全く思わない」
「……本当に?」
「本当に」
奏の口からそれを聞けると、私の奥の奥で張り詰めていた緊張の糸が切れたような気がした。
奏が両手を広げる。
「おいで」
私が素直に彼の膝に乗ると、奏は私を抱きしめた。
「これからのことなんだけど」
「うん」
「僕は、このツアーが終わったらオーストリアに帰る」
それはわかっていたけど、改めて言葉にされると、寂しい。
「一緒に、来て欲しい」
私は、思わず少し離れて奏の顔を見た。
「……でも、オーストリアで私にできる仕事があるかしら?」
「仕事はしてもしなくてもいい。僕が言いたいのは……僕の妻になって欲しい」
「……私でいいの?」
「花音、君がいいんだ」
「……」
私は、誰にそう言われたわけでもないのに、自分には価値がないと思い込んでいた。
信じていた人たちに、裏切られる程度の女なのだと……自分を貶めていた。
それなのに……奏は、私がいいのだと言ってくれる。自分でも信じられなくなっていた私の価値を、認めてくれる人。
――傷だらけだった自尊心が、癒されていく。
思わず涙ぐむ私に、奏はキスの雨を降らせる。
「本当は、ゆっくり君の気持ちを温めたりしたいけど……僕たちはもうじき、時差のある国で離れ離れになってしまう。前にも言ったけど、僕はもう……君を逃すつもりはない」
止まないキスの雨が心地よかった。
「花音……返事は?」
「……照れるわ」
「花音、ここには僕たち二人だけだよ。自分の気持ちに素直でいていいんだ」
そうか。素直になっていいのか。
そこで私は、今まで素直になることにセーブをかけていたことに気が付いた。
「私……今まで無意識にだけど、素直に行動したらいけないと思っていたかも知れない」
「じゃあ、これからは素直に生きればいいね」
「そうね……。でも、難しい」
「どんなところが?」
「私の今の気持ちは……複雑なの」
「一つ一つほぐしていくのはどう?」
奏は、考え込む私の頭を撫でる。
「まず僕から先に一つ、素直になってみようかな」
「いいね。お手本を見せて」
「……花音はもう正式にフリーになったことだし、遠慮なく君を口説き落としたいと思っているんだけど……いいかな?」
「……」
「まだダメ?」
「ううん。違うの。……本当のことを言うと、口説き落とされるまでもなく、私はあなたに夢中」
奏は、驚いて目を瞬いたけれど、「Yes!」と小さく呟いた。
「じゃあ……どの辺が複雑なの?」
「私、ついこの間まで他の人を好きで結婚しようとしていたでしょう?」
「うん。そうだね。……それが、何?」
「何って……それなのに、すぐあなたを好きになって……いいのかしら?」
「……いいに決まってる」
「そうなの? ……すぐ別の人に惹かれて軽い女とか思われたりしないかしら?」
「誰に?」
「……あなたに」
奏が、自分の口を手で押さえて私を見る。
「花音……可愛い」
「え? 今のどこが可愛いの?」
「だって、僕にどう思われるかが心配だったんでしょう?」
「……そうね」
「結論から言うと、僕は君が軽い女だと全く思わない」
「……本当に?」
「本当に」
奏の口からそれを聞けると、私の奥の奥で張り詰めていた緊張の糸が切れたような気がした。
奏が両手を広げる。
「おいで」
私が素直に彼の膝に乗ると、奏は私を抱きしめた。
「これからのことなんだけど」
「うん」
「僕は、このツアーが終わったらオーストリアに帰る」
それはわかっていたけど、改めて言葉にされると、寂しい。
「一緒に、来て欲しい」
私は、思わず少し離れて奏の顔を見た。
「……でも、オーストリアで私にできる仕事があるかしら?」
「仕事はしてもしなくてもいい。僕が言いたいのは……僕の妻になって欲しい」
「……私でいいの?」
「花音、君がいいんだ」
「……」
私は、誰にそう言われたわけでもないのに、自分には価値がないと思い込んでいた。
信じていた人たちに、裏切られる程度の女なのだと……自分を貶めていた。
それなのに……奏は、私がいいのだと言ってくれる。自分でも信じられなくなっていた私の価値を、認めてくれる人。
――傷だらけだった自尊心が、癒されていく。
思わず涙ぐむ私に、奏はキスの雨を降らせる。
「本当は、ゆっくり君の気持ちを温めたりしたいけど……僕たちはもうじき、時差のある国で離れ離れになってしまう。前にも言ったけど、僕はもう……君を逃すつもりはない」
止まないキスの雨が心地よかった。
「花音……返事は?」