『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません

 これからリリアーナの生家に向かうというと、彼女は目に涙をいっぱいにためて、喉から絞り出した声でグレイに感謝を伝えた。

「アザール様には、なんてお礼を伝えたらいいのか。この人生をかけて、誠心誠意尽くします」

「そんなに、かしこまらないでください。まずは、ご両親と会うことだけ考えていきましょう。目の具合は大丈夫?」

「……はい、ありがとうございます。これから八年ぶりに、両親に会えるので緊張しています。でも……、こんな痩せた姿では、きっと驚かせてしまうでしょう」

 向かいに座るリリアーナは、困ったように下を向いてしまった。何年も会えなかった娘が、ずいぶん痩せて現れたらと……両親の驚きを想像したのだろう。

「どんな姿でも、ご両親はリリアーナが顔を見せてくれたことを、きっと一番に喜びますよ。……この戦争ではたくさんの人間が、帰りたい、帰ってきて欲しいと願いましたから」

 戦場で、修道院で、帰りたくても叶わなかった人がいたことを二人は思い出す。リリアーナの頬に涙が流れるのを見て、グレイはハンカチをそっと差し出した。

「ありがとうございます、アザール様。それと……私にはどうぞ、敬語など使わないでください」

「では、そうしよう。俺のこと、名前で呼んでと言ったら、リリアーナは困る?」

(ゆっくり関係を進めようと思っているのに、心が急いて口から願望が出てしまう……っ)

 ふるふると、リリアーナは首を横に振る。その顔は赤く染っていて、グレイの喉からは堪らず「ぐうっ」と変な声が出てしまった。

「グレイ……様?」

「いい、とてもいい。そのままずっと、名前で呼んでくれ」

 早口になったグレイを見て、リリアーナは目を細めようとするが……。ぎこちない表情に、グレイはリリアーナの手に自分の手をふわりと重ねた。
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