『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
(リリアーナSide)
八年苦しんだ城暮らしから、グレイはあっという間にリリアーナを救い出してくれた。今その足ですぐに、両親の元へ向かってくれる。
まだ夢を見ているような気持ちと、グレイに対してとても迷惑をかけているという気持ちに、リリアーナは押しつぶされそうになっていた。
『笑いもしない嘘つき、欠陥品リリアーナなら勝利の褒美としてくれてやるよ!』
そうシルバが言ったとき、どうすればよかったのかと考えてしまう。
『殿下! そのお言葉、謹んでお受けいたします』
そう抱きとめながら言ってくれたグレイの腕から、無理矢理にでも逃げ出せば良かったのか。そうすれば、グレイがいきなりこんな面倒を押しつけられるのは、少なくとも回避できたかもしれない。
(……本当にお優しい人。私が恥をかかないよう、婚約に喜ぶフリまでしてくださった。私は……グレイ様にこれからどれくらい恩返しができるだろう)
この国の若き英雄騎士、その隣に立ちのが相応しい女性が現れたら、潔よく身を引こう。いつだって婚約破棄されてもいいよう、覚悟だけはしっかりとしておこうと、リリアーナは膝の上で小さく拳を握った。
(愛して欲しいなんて、思ってはだめ。優しさに感謝しても、甘えてはいけない。この人に迷惑は、もうかけたくない)
心を揺るがす色々なことが起きて、体力の無いリリアーナは少し疲れてしまった。ちょっとだけ、と目を閉じると、疲労が一気に体を重くした。
「リリアーナ。こちらに頭と体を預けて、着いたら起こすからね」
肩を優しい力で引き寄せられたけれど、まぶたが重くて状況を確認することができない。
(……グレイ様が隣にきて、私を寄りかからせてくれている……。ああ、甘えないと決めていたのに……私ってば)
馬車の振動までも心地よくて、リリアーナは意志とは反対にすとんと深い眠りに落ちてしまった。