『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
「わかりました。気をつける……と言ったら変な表現になってしまいますが、なにも起きないように注意したいと思います」
「ああ。俺も全力で注意を払うよ。舞踏会も、楽しもう」
馬車はそのタイミングで、屋敷の正面に止まった。すぐに馬車の扉の向こうで、御者が踏み台を用意している。
リリアーナは、深く深呼吸をする。
(グレイ様の妻らしく、しっかりしないと)
馬車の扉が開く。リリアーナは御者に差し出された手を取り、ゆっくりと踏み台を使って下りた。
一斉に貴族たちの視線が集まるのを、肌で感じる。
以前のそれはシルバに虐げられている者を見る哀れみや好奇心が含まれていたけれど、今はまったく違っていた。
横に立ったグレイに、リリアーナはこっそりと耳打ちをする。
「皆さん、め、珍しいものでも見るような表情です」
「心配する必要はないよ。皆、リリアーナの美しさ釘づけになっているだけさ」
そんなことを言ったら、グレイの方こそだ。女性陣の熱い眼差しが、四方八方から集まってくる。独身時代からどれほどモテてきたか、今リリアーナは思い知っている。
「さあ、中に入ろう」
グレイからスマートに腕を差し出されて、リリアーナはそれに軽く自分の手を添えた。