三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
「これ、うま」

運ばれてきたピザを一口食べて、彼が目を丸くした。口元から伸びたチーズを慌てて巻き取る。そのまま、もう一口。

よく食べるなあ。

私がまだ一切れ目の半分を食べている間に、彼は二切れ目に手を伸ばしていた。

「おねーさん、ここよく来るの?」
「たまにね。こっちのパスタも美味しいよ」
「食べていい?」
「どうぞ」

彼は嬉しそうに受け取った。

よく食べるし、よく喋る。大学の授業のことや、友達と旅行に行って帰りの電車を間違えたこと。最近見た映画が面白かったという話もしてくれた。

「それ、私も気になってた」
「絶対見たほうがいい。最後がさ――」
「待って。最後は言わないで」

彼はフォークを持ったまま笑った。

「あ、そっか」

危ない。映画館に行く前に全部知るところだった。

「おねーさんは、普段どういうの見るの?」

聞かれて最近見た映画を挙げると、彼も見ていたらしい。好きな場面を話しているうちに、気づけば私の皿も空になっていた。一人なら、スマホを眺めながら食べ終えていたかもしれない。今日は料理が来るたびに感想を言い合って、ずいぶん笑った。

「まだ食べられる?」
「うん。でも、いいの?」
「私もデザート食べたいから」

メニューを開くと、彼が向かいから覗き込んだ。

「これ、うまそう」
「ティラミス?」
「うん。おねーさんは?」

写真を見比べ、私はもう一方を指した。

「パンナコッタかな」
「じゃあ、一口交換しよ」

私が顔を上げると、彼はもう店員さんを呼ぼうと手を上げていた。距離の詰め方が早いなあ。ただ、私もティラミスは少し気になっていた。
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