三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
店を出る頃には、駅前の人通りも少なくなっていた。

「ごちそうさまでした。ほんと美味しかった」

隣で彼が、ぺこりと頭を下げる。

「どういたしまして」

喜んでくれたなら何よりだ。私も、美味しくて楽しい夕食だった。駅へ向かおうとすると、彼が少しかがんで顔を覗き込んできた。

「おねーさん、このあとどうする?」
「帰るよ?」
「え?」

意外そうな顔をされて、私も足を止めた。

「え?」

何だろう。何か予定があっただろうか。彼は一度口を開き、それから小さく笑った。

「……そっか。帰るんだ」
「うん。明日も仕事だし」

そこでようやく、彼が何を尋ねていたのか、何となく察した。
ああ。ご飯のあとも、一緒にいると思っていたのかな。

「お腹いっぱいになった?」
「なった。すごく」
「それならよかった」

彼は私を見て、また笑った。店の中にいたときより、少しだけゆっくりした笑い方だった。

「ね、連絡先聞いてもいい?」
「いいよ」

スマホを取り出すと、すぐに画面を覗き込んでくる。連絡先を交換し、改札の前で別れた。電車を待ちながらスマホを見ると、もう連絡が届いていた。

『今日はありがと! ごちそうさまでした』

その下には、両手を合わせたキャラクターのスタンプ。私は笑って、『こちらこそ、楽しかったよ』と返した。

また誘われたら、ご飯くらい奢ってもいいかな。そんなことを考えながら、ホームに入ってきた電車に乗った。


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