今宵、黒蝶を溶かして。
けれど、ひとりの男子生徒が光莉へ歩み寄ってきた。

「三日月さん、おはよう。昨日のプリント――」

男子が光莉に近づいた、その瞬間。

冬真が一歩前に出た。

「何の用だ」

「えっ、いや、プリントを渡そうと……」

「俺に渡せ」

「御影、お前に渡すものじゃ――」

男子が言い終わる前に、冬真の視線が鋭くなる。

その空気に、男子は思わず口を閉じた。

「冬真くん!」

光莉が慌てて冬真の腕をつかむ。

「プリントくらい、私が受け取るから」

「……光莉がそう言うなら」

冬真はしぶしぶ男子からプリントを受け取り、光莉へ渡した。

「ありがとう」

光莉が笑うと、冬真の表情が一瞬で柔らかくなる。

それを見た四人は、そろって顔を見合わせた。

「分かりやすすぎるだろ……」

迅が呟く。

「光莉ちゃんの笑顔ひとつで、総長の機嫌が直った」

蓮司も苦笑した。

「女嫌いって設定、もう崩壊してない?」

「設定じゃない」

冬真が冷たく返す。

「俺は今でも、女は嫌いだ」

そして、光莉の髪にそっと触れた。
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