今宵、黒蝶を溶かして。
「寒くないか?」

「大丈夫だよ」

「念のため、これを着ろ」

玲央が差し出したのは、黒蝶の紋章が入った上着だった。

「えっ、これを学校に?」

「何かあったとき、黒蝶だと分かる」

「余計に目立つよ!」

光莉が慌てていると、冬真が自分のマフラーを外し、光莉の首に巻いた。

「これでいい」

「冬真くんの……?」

「俺の匂いがするから、変な奴も近づかない」

「理由が怖いよ!」

蓮司がすかさず突っ込む。

「総長、それただの独占欲だろ」

冬真は無視して、光莉の手を握った。

「行くぞ」

黒蝶のメンバーと一緒に歩く通学路は、いつもとまったく違っていた。

すれ違う人たちが振り返る。
同じ学校の生徒たちも、驚いたようにこちらを見ている。

「ねえ、あの人たちって……」

「黒蝶じゃない?」

「御影冬真もいる……!」

ざわめきが広がるたび、光莉は落ち着かなくなった。

すると冬真が、光莉の歩幅に合わせて速度を落とす。

「疲れたか」

「ううん、大丈夫」

「無理なら言え」

「本当に平気だよ」

「なら、手を離すな」

「えっ?」

「人が多い」

そう言って、冬真は光莉の手をさらに強く握った。

その様子を見ていた迅が、にやにやしながら口を挟む。

「総長、光莉ちゃんが迷子になるとでも思ってんのか?」

「思っている」

「即答!?」

玲央も光莉の反対側を歩きながら、周囲を警戒している。

「冬真、右側は俺が見る」

「頼む」

「いや、何の作戦会議だよ!」

蓮司の声が通学路に響いた。

学校に到着すると、校門前にはすでに生徒たちが集まっていた。

冬真たちが現れた瞬間、空気が一変する。

誰も近づいてこない。
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