浪費家王子に婚約破棄されましたが、王女だった(隠れ)王子に財務相談役として囲い込まれています
第1話:王女が王子?
『約束よクリス。私たちずっと親友でいましょうね』
『もちろんロティ。私たち……』
『『ずっと一緒』』
幼い指が、互いの小指を固く絡め合った。
あの頃の誓いはいつまでも色褪せないと、シャルロットは今でも信じている。
ーーガシャン!
激しい金属音が、豪奢な応接室の空気を引き裂いた。
陶器のカップがソーサーに乱暴に叩きつけられ、白いテーブルクロスに点々と褐色の染みを作っていく。
シャルロットは目の前に座る婚約者を見上げた。
第一王子、フェルナンド・ブランデンブルク。
彼は不機嫌そうに顔を歪め、椅子の背もたれに深く体重を預けている。退屈さを隠そうともせず、貧乏ゆすりを続けた。
「……フェルナンド様、私はただ、来期の費用の見直しについて」
「黙れ。 顔を合わせるたびに浪費がどうこう、作物の実りがどうこう、製粉の改善がどうこう辛気臭い。財務大臣気取りのお前の話はもううんざりだ!」
シャルロットは手元に広げた大きな帳簿に視線を落とす。
そこにはシャルロットが管理を手伝っているフェルナンド王子の財産状況が示されていた。少しでも彼の助けになればと、寝る間を惜しんでまとめたものだ。
勢いよく立ち上がったフェルナンドは、一度も振り返ることなく部屋を出ていった。
扉が激しい音を立てて閉まり、静寂だけが残される。
シャルロットは力なく肩を落とした。
フェルナンドに嫌われていることなど百も承知だが、このところ、彼のために代行している仕事の話すら拒絶されるようになった。頭がキリキリと痛む。
パートナーに愛されたい。
夫となる人を愛し、自分もまた愛されたい。
そんな淡い夢は、とうの昔に捨てた。
「気にしちゃダメ。あなたの良さに気付かないだなんて、兄はボンクラだわ」
聞き慣れた、少し低めで落ち着いた声がする。
振り返ると、親友のクリスティーヌ王女――クリスが立っていた。