恋の花火がきえる時。
そして、自分の席へ戻ろうとする。

「光輝」

「何」

「今日も一緒に帰ろうね」

 光輝は少しだけ目を伏せた。

「……ああ」

「約束だよ」

「分かってる」

 理紗は満足そうに笑った。

 その笑顔を見て、光輝は思う。

 理紗が病気でも、いつか自分がいなくなっても。

 少なくとも今だけは、理紗の隣にいたい。

 理紗に、いつも通り笑っていてほしい。

 だから光輝は、何事もなかったように振る舞う。

 自分の秘密も。
 理紗への恐怖も。
 いつか来るかもしれない別れも。

 全部、胸の奥にしまい込んで。

「光輝、今日の一時間目って何だっけ?」

「数学」

「えっ、苦手……」

「昨日、予習するって言ってなかったか」

「言ったけど、寝ちゃった」

「馬鹿」

「ひどい!」

 教室に、理紗の笑い声が響く。

 光輝は窓の外を見た。

 春の空は、どこまでも青かった。

 この時間が永遠に続けばいい。

 そんな願いを、光輝は誰にも言えなかった。
< 41 / 90 >

この作品をシェア

pagetop