愛してるなんて、噓でしょう?
蓮 side


美月の質問が、頭から離れない。


俺は幸せか。


以前なら、そんなことを考える余裕もなかった。


東條会の若頭として生きること。


父親の期待に応えること。


組織の中で自分の立場を守ること。


それが当たり前だった。


でも、今は違う。


美月といる時間だけは、何も考えずに笑える。

「美月ちゃん」

「はい?」

「俺は、君といると自分が普通の人間に戻れる気がする」

「普通の人間?」

「うん。若頭でも、誰かの息子でもなくて。ただの俺でいられる」

美月は少し驚いたあと、優しく笑った。

「じゃあ、私の前では普通の蓮さんでいてください」

その言葉に、胸が熱くなった。

「……そうする」

俺は、今度こそ彼女の気持ちを大切にしたい。


昔の約束ではなく。


今の彼女の言葉を信じて。

< 102 / 179 >

この作品をシェア

pagetop