愛してるなんて、噓でしょう?
蓮 side
美月が少しずつ思い出している。


そのことが嬉しい。


同時に、怖くもあった。


記憶が戻れば、彼女は知ることになる。


十二年前のあの日。


俺たちが離れ離れになった理由。


そして、彼女の父親が抱えていた秘密。

「蓮さん」

「どうした?」

「昔の私って、どんな子だった?」

俺は少し考えてから答えた。

「優しい子だったよ」

「それだけ?」

「よく笑って、少しおせっかいで、困っている人を放っておけない子」

「なんだか恥ずかしい」

美月が笑う。


その笑顔は、昔と同じではない。


けれど、どこか重なるものがあった。

「今もそうだよ」

「え?」

「今の美月も、変わらず優しい」

俺は彼女の手を握った。

「だから、これからは俺にも頼ってほしい」

「うん」

彼女は小さく頷いた。


もう二度と、過去の約束だけに縛られるつもりはない。


今の彼女と、これからを歩いていきたい。


――忘れていた時間は、少しずつ形を取り戻していく。


けれど、その記憶の先にあるものは、まだ誰にも分からなかった。

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