崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
 アルベック城の守備を命じられたミランダは、わずかな手荷物のみを抱えて馬車に乗った。自力で飛んだほうが速いのだが、これには皇帝の命令に背いたミランダへの懲罰の意味も含まれている。

 そのためミランダや魔道学院の生徒たちが乗る馬車には、険悪な表情の騎士たちも乗っていた。ミランダ、もしくは学生の誰か一人でも勝手に逃げ出したりしたら、残った者たちを容赦なく処刑すると脅しているのだろう。

「……あなたたちまで巻き込んでしまい、ごめんなさい」

 馬車の旅での休憩中、監視の目はあるものの手洗いのために女性だけで移動することを許されたときにミランダが謝ると、魔道学院の女子生徒は首を横に振った。

「滅相もございません! 私たち、これまでミランダ様が学院のために盾になってくださったってこと、知ってるんです! 学院長様も、これまでのご恩を返すためにもミランダ様に協力しなさいと言ってくださいました!」

 そう言う彼女は、赤いお下げを背中に垂らしている。
 帝都の商家出身で、現在学院の最高学年の十五歳。下に多くの弟妹がおり、学院を卒業したら魔術師団に就職してたくさん稼ぐのが目標……だった、らしい。

 彼女が入学した翌年、前皇帝の急死により帝国の状況は大きく変わった。
 もう彼女が魔術師団に就職するという道は完全に閉ざされてしまったがそれでも、魔術師としてできることを頑張りたいという意欲に燃えていた。

 彼女をはじめとした、今回動員された魔道学院の生徒たちは皆やる気に満ちていた。
 魔道学院は三学年制で、今回徴兵されたのは最高学年に所属する十八人だった。魔道学院もかつては百人以上の生徒が通う学び舎だったが、今はすっかりさびれて小規模になってしまっていた。

 十八人はミランダと共に戦い、魔道学院の名に恥じない成果を残すのだと意気込んでいる。
 それがまた……ミランダにとっては、申し訳なかった。

(この子たちを、無駄死にさせたりはしない……!)

「ありがとう。あなたたちのことを頼りにしているわ。えっと……」
「あっ、私のことはレベッカとお呼びください!」

 レベッカは自ら名乗り、お下げを揺らしてお辞儀をした。

「私たち、まだまだ見習いだけど魔道学院でたくさん学んできました。ミランダ様の足下にも及ばないけれど……頑張ります!」
「……本当にありがとう。頼りにしているわ、レベッカ」

 ミランダがそう言って微笑むと、レベッカは「えへへ」と照れたように笑ってくれた。
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