崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
シリルはしばらくアルベック城に滞在したのちに、帝都に向けて出陣した。
それには、魔道学院の男子生徒四人も生活補助係として従軍することになった。
彼らは「アルベック城の代表として頑張ります!」「ミランダ様は、元気な赤ちゃんを産んでくださいね!」と元気いっぱいに挨拶していたので、ミランダは彼らを一人一人しっかり抱きしめてから送り出した。
アルベック城は王国軍の駐屯地となったため、帝国軍の襲撃を受けて奪い返されては困る。
そのためシリルは自分の部隊の一部をアルベック城に残し、また王国から次々にやってくる王国軍たちも帝都進軍前の拠点としてアルベック城を利用した。
ミランダはシリルにより、アルベック城の仮の城主として任命された。そのため体調がひどい日でなければ王国軍の接待をしたり手紙の返信作業をしたりして、王国軍に協力した。
その傍らにはいつもレベッカがおり、「ミランダ様のことを、シリル殿下から託されたんです!」と息巻いていた。
「といっても私、ミランダ様の秘密をみんなの前でばらしちゃったし……その前にもミランダ様を赤ちゃんのことで脅したし、信用なんてないですよね」
ある日レベッカがしょぼんとして言ったので、ミランダは微笑んだ。
「そんなことないわ。あれも全てあなたの愛ゆえだとわかっていたし、あなたがあのとき暴露してくれたから今のこの城の平穏があるとも言えるわ」
「そ、そうでしょうか?」
「そうよ、だから気にしないで。……ああ、そろそろ見回りに行かないと」
「大丈夫ですか? だいぶお腹、膨らみましたよね」
椅子から立ち上がったミランダだが、レベッカの言うように今ではお腹の膨らみがローブ越しでもよくわかるようになっていた。
夏の終わりに思いがけない形で宿った子は、アルベック城の冬の寒さにも負けずすくすくと育っている。
近くの村から派遣されてきた医者曰く、だいぶ大きめの子になりそうだとのことだ。シリルが高身長なので、さもありなんというところだろう。
「今は悪阻もないし、だいぶ動きやすいほうよ。今のうちにしっかり動いておかないと」
「そうですね。……そういえば名前とかって、もう決めているんですか?」
部屋を出たミランダの付き添いをしながらレベッカが尋ねるので、ミランダは「名前……」とつぶやく。
おそらく来年の春の終わりには生まれるだろうから、それまでに名前を考えておかないといけない。
男の子と女の子、どちらが生まれてもいいように二人分の名前を考えておく必要があるのだが……。
(……シリル殿下に、つけてもらいたい)
無理だとはわかっている。
彼にとって、そんなことをする理由はないと理解している。
それでも……この子の父親がシリルであると知るのがミランダだけだとしても、シリルに名前をつけてほしいと思ってしまった。
身分の高い人に子どもの名付け親になってもらうというのは、とても名誉なことだ。だからシリルならお願いすれば名付け親になってくれそうだが……。
(できれば自然な形で名前をつけてもらいたい。……あ、そうだ)
ふとあることを思いついたミランダは、廊下を歩きながらお腹を撫でる。
いずれここに帰ってくるだろうシリルに会えるのを、この子も楽しみにしてくれているだろうか。
それには、魔道学院の男子生徒四人も生活補助係として従軍することになった。
彼らは「アルベック城の代表として頑張ります!」「ミランダ様は、元気な赤ちゃんを産んでくださいね!」と元気いっぱいに挨拶していたので、ミランダは彼らを一人一人しっかり抱きしめてから送り出した。
アルベック城は王国軍の駐屯地となったため、帝国軍の襲撃を受けて奪い返されては困る。
そのためシリルは自分の部隊の一部をアルベック城に残し、また王国から次々にやってくる王国軍たちも帝都進軍前の拠点としてアルベック城を利用した。
ミランダはシリルにより、アルベック城の仮の城主として任命された。そのため体調がひどい日でなければ王国軍の接待をしたり手紙の返信作業をしたりして、王国軍に協力した。
その傍らにはいつもレベッカがおり、「ミランダ様のことを、シリル殿下から託されたんです!」と息巻いていた。
「といっても私、ミランダ様の秘密をみんなの前でばらしちゃったし……その前にもミランダ様を赤ちゃんのことで脅したし、信用なんてないですよね」
ある日レベッカがしょぼんとして言ったので、ミランダは微笑んだ。
「そんなことないわ。あれも全てあなたの愛ゆえだとわかっていたし、あなたがあのとき暴露してくれたから今のこの城の平穏があるとも言えるわ」
「そ、そうでしょうか?」
「そうよ、だから気にしないで。……ああ、そろそろ見回りに行かないと」
「大丈夫ですか? だいぶお腹、膨らみましたよね」
椅子から立ち上がったミランダだが、レベッカの言うように今ではお腹の膨らみがローブ越しでもよくわかるようになっていた。
夏の終わりに思いがけない形で宿った子は、アルベック城の冬の寒さにも負けずすくすくと育っている。
近くの村から派遣されてきた医者曰く、だいぶ大きめの子になりそうだとのことだ。シリルが高身長なので、さもありなんというところだろう。
「今は悪阻もないし、だいぶ動きやすいほうよ。今のうちにしっかり動いておかないと」
「そうですね。……そういえば名前とかって、もう決めているんですか?」
部屋を出たミランダの付き添いをしながらレベッカが尋ねるので、ミランダは「名前……」とつぶやく。
おそらく来年の春の終わりには生まれるだろうから、それまでに名前を考えておかないといけない。
男の子と女の子、どちらが生まれてもいいように二人分の名前を考えておく必要があるのだが……。
(……シリル殿下に、つけてもらいたい)
無理だとはわかっている。
彼にとって、そんなことをする理由はないと理解している。
それでも……この子の父親がシリルであると知るのがミランダだけだとしても、シリルに名前をつけてほしいと思ってしまった。
身分の高い人に子どもの名付け親になってもらうというのは、とても名誉なことだ。だからシリルならお願いすれば名付け親になってくれそうだが……。
(できれば自然な形で名前をつけてもらいたい。……あ、そうだ)
ふとあることを思いついたミランダは、廊下を歩きながらお腹を撫でる。
いずれここに帰ってくるだろうシリルに会えるのを、この子も楽しみにしてくれているだろうか。