崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
シリルが帝国に『留学』したのはそもそも、王座を狙う叔父から逃げるためだった。
女王の年の離れた弟である王弟は、姉も甥も殺そうとした。度重なる襲撃でやつれたシリルを見かねて女王はこっそり息子を帝国に送り、弟との戦いに決着をつけようとした。
そして――ミランダが二十二歳、シリルが十八歳のときに、女王たちは王弟を追い詰めた。崖の上で退路を断たれた王弟はそのまま、崖下に落下した。
その日は嵐で、捜索は困難だった。嵐が空け、豪雨による増水の被害も収まってからようやく崖下を調べた結果、損傷の激しい遺体が見つかった。
死体の血では、『祝福印』の測定ができない。だがわずかに残った衣類や成人男性と思われる骨格、そして発見された場所から、これが王弟の遺骸だろうと判断されたのだ。
現に、シリルが帰ってからの王国は平和そのものだった。王弟派は一掃され、王家に仇なす者は存在しない。
だからあの遺骸が王弟で、この戦いに終止符が打たれたのだろう、ということになった。
……だが、セドリックに【剣】の『祝福印』があると知ったシリルは、叔父が生きていたのだと解釈した。
叔父はシリルより十歳上だから、ミランダからすると六つ上。恋愛対象になってもおかしくないし、彼も金髪を持つなかなかの美男子だった。
叔父は奇跡的に生き延びており、崖下で見つけたあの遺骸は他人だった。叔父は帝国に落ち延び、そこでミランダと出会い、子を成したのではないか。
あの夜の記憶がないシリルではそうとしか想像できず……だからといって老神官に「殿下のお子ですね?」と聞かれて、「いいえ、おそらく叔父の子です」とは言えなかった。
だから彼は、全てを背負い――たとえ自分がミランダに嫌われたとしても彼女とセドリックを守る決意を固めて、「僕が父親だ」と言ったのだった。
女王の年の離れた弟である王弟は、姉も甥も殺そうとした。度重なる襲撃でやつれたシリルを見かねて女王はこっそり息子を帝国に送り、弟との戦いに決着をつけようとした。
そして――ミランダが二十二歳、シリルが十八歳のときに、女王たちは王弟を追い詰めた。崖の上で退路を断たれた王弟はそのまま、崖下に落下した。
その日は嵐で、捜索は困難だった。嵐が空け、豪雨による増水の被害も収まってからようやく崖下を調べた結果、損傷の激しい遺体が見つかった。
死体の血では、『祝福印』の測定ができない。だがわずかに残った衣類や成人男性と思われる骨格、そして発見された場所から、これが王弟の遺骸だろうと判断されたのだ。
現に、シリルが帰ってからの王国は平和そのものだった。王弟派は一掃され、王家に仇なす者は存在しない。
だからあの遺骸が王弟で、この戦いに終止符が打たれたのだろう、ということになった。
……だが、セドリックに【剣】の『祝福印』があると知ったシリルは、叔父が生きていたのだと解釈した。
叔父はシリルより十歳上だから、ミランダからすると六つ上。恋愛対象になってもおかしくないし、彼も金髪を持つなかなかの美男子だった。
叔父は奇跡的に生き延びており、崖下で見つけたあの遺骸は他人だった。叔父は帝国に落ち延び、そこでミランダと出会い、子を成したのではないか。
あの夜の記憶がないシリルではそうとしか想像できず……だからといって老神官に「殿下のお子ですね?」と聞かれて、「いいえ、おそらく叔父の子です」とは言えなかった。
だから彼は、全てを背負い――たとえ自分がミランダに嫌われたとしても彼女とセドリックを守る決意を固めて、「僕が父親だ」と言ったのだった。