崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
シリルとの婚礼を上げた日の、夜。
「寝ましたか?」
「うん、ぐっすりだったよ」
子ども部屋から帰ってきたシリルにミランダが問うと、彼は微笑んでドアを閉めた。
「昼間、泣かずによく頑張ってくれたからね。あとのことはレベッカに任せておいたよ」
「ありがとうございます。レベッカも、本当に頼りになりますね」
ミランダは微笑み、ソファに座った夫の隣に寄り添った。
今日の結婚式は一日中大忙しで、ミランダも挨拶回りをしたりいろいろ飲み食いをしたり、疲れたが非常に充実していた。
アルベック城から駆けつけた魔術師や兵士たちもいて、皆は大泣きで祝福してくれた。
それはレベッカたち王城勤めの者も同じで、今もセドリックのお守りをしてくれるレベッカは昼間に泣きすぎたので、まだ目が真っ赤だった。
「いろんな人に祝福されて……本当に幸せです」
「そうだね。僕も、幸せだよ。ずっと好きだった人を奥さんにできたんだから」
シリルは甘やかな声で言うとミランダの腰を抱き寄せて、そっと頬にキスをした。
彼との結婚が決まって、半年。
元々優しかったシリルはぐんと甘くなり、こうしてキスをしてくれるようになった。彼曰く、「ずっとずっと前からしたかったんだよ」とのことだ。
ミランダの頬や鼻先や額、あちこちにキスをしていくのが嬉しくもくすぐったくて、ミランダはシリルの胸を軽く押した。
「もう、甘えすぎですよ」
「いいじゃないか。今日は君と結婚できた人生最高の日なんだから、もっと甘えさせてよ」
シリルは微笑んで、とどめとばかりにミランダの唇を奪った。婚礼中はばっちり化粧をして唇にも紅を塗っていたから、大聖堂で行った誓いのキスは軽く触れるだけだった。
だが今は紅を落として保湿用のクリームだけを塗っているので、唇や顔が汚れることを気にしなくていいシリルは容赦なくミランダの唇を奪ってきた。
「んっ……」
「……ミランダ、かわいい」
口づけの合間に囁いたシリルはとろんと目を潤ませるミランダを見て微笑み、彼女が纏う薄手のネグリジェの肩口にそっと触れた。
「本当に……ああ、過去の自分が憎らしいよ。ミランダのことを大切にできなかったうえに、なにも覚えていないのだから!」
シリルは過去の自分に呪詛を吐き、ミランダをぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。彼はまだ、二年前の夏にミランダを無理矢理襲ったことを後悔しているようだ。
「ミランダは、怖かったよな? ……こういうことをすると、やはり二年前のことを思い出してしまう?」
「大丈夫ですよ、もうあなたの気持ちもわかっていますから」
ミランダは微笑んだものの、ふと疑問がわいてきた。
「……そういえばあの夜、あなたはどうやら目が見えていなかったようですけれど、私とわかっていて抱いたのでしょうか」
「……毒矢に倒れたあとのことはいまだに記憶がないのだけれど多分、夢を見ていると思ったんだろう」
シリルはミランダの胸元に顔を擦り付けながら、ぼそぼそと答えた。
「熱でぼんやりする視界で、ミランダが見えた。だからきっと、いつものことだと思って……」
「いつも?」
「あっ」
しまった、とシリルが息を呑むが、ミランダはぐいぐいと詰め寄った。
「いつもって……まさか、あなたってその頃から夢で……」
「仕方ないだろう! 僕はずっと君のことが好きで……でも離ればなれになったから、夢でもないと会えないから……」
「……」
「……幻滅した?」
ミランダの胸に顔を突っ込んだままくぐもった声で言うので、ミランダはくすっと笑ってからシリルのつむじを撫でた。
「いいえ。それくらい好きでいてくれたのなら……まあいいかな、と思えます」
「ミランダ、優しい……愛している……」
シリルは嬉しそうに言ってから、ミランダの胸に頬ずりしつつ顔を上げた。
「……ずっとずっと、君のことが好きだ。君を愛して大切にして、セドリックのことも守ってみせる」
「シリル様……」
「僕と結婚してくれて……僕の過ちを受け入れてくれて、ありがとう、ミランダ」
シリルがそう言って微笑むので、ミランダも微笑み返してから夫の頬に唇を寄せた。
「私こそ。私のことを守ろうとしてくれて……本当にありがとうございます。愛しています、シリル様」
「ミランダ……」
互いに愛と、感謝を述べた二人の視線が絡まり、唇が重なる。
触れあう体温が、愛おしい。
すれ違いの果てに愛する人と手を取る未来にたどり着けたことが、たまらなく嬉しい。
「……行こうか、奥さん」
深く甘い口づけの末に、シリルは緑色の目を情熱的に燃やしてミランダにささやいた。
「君を腕に抱いて寝るのは、結婚してからと決めていた。……それに、二年前の挽回もしたい」
「ふふ。……優しくしてくれますか?」
「うん、めいっぱい優しくする。だから、いい?」
シリルに甘く乞われて、ミランダに否と言えるはずがない。
「……喜んで。私の旦那様」
「寝ましたか?」
「うん、ぐっすりだったよ」
子ども部屋から帰ってきたシリルにミランダが問うと、彼は微笑んでドアを閉めた。
「昼間、泣かずによく頑張ってくれたからね。あとのことはレベッカに任せておいたよ」
「ありがとうございます。レベッカも、本当に頼りになりますね」
ミランダは微笑み、ソファに座った夫の隣に寄り添った。
今日の結婚式は一日中大忙しで、ミランダも挨拶回りをしたりいろいろ飲み食いをしたり、疲れたが非常に充実していた。
アルベック城から駆けつけた魔術師や兵士たちもいて、皆は大泣きで祝福してくれた。
それはレベッカたち王城勤めの者も同じで、今もセドリックのお守りをしてくれるレベッカは昼間に泣きすぎたので、まだ目が真っ赤だった。
「いろんな人に祝福されて……本当に幸せです」
「そうだね。僕も、幸せだよ。ずっと好きだった人を奥さんにできたんだから」
シリルは甘やかな声で言うとミランダの腰を抱き寄せて、そっと頬にキスをした。
彼との結婚が決まって、半年。
元々優しかったシリルはぐんと甘くなり、こうしてキスをしてくれるようになった。彼曰く、「ずっとずっと前からしたかったんだよ」とのことだ。
ミランダの頬や鼻先や額、あちこちにキスをしていくのが嬉しくもくすぐったくて、ミランダはシリルの胸を軽く押した。
「もう、甘えすぎですよ」
「いいじゃないか。今日は君と結婚できた人生最高の日なんだから、もっと甘えさせてよ」
シリルは微笑んで、とどめとばかりにミランダの唇を奪った。婚礼中はばっちり化粧をして唇にも紅を塗っていたから、大聖堂で行った誓いのキスは軽く触れるだけだった。
だが今は紅を落として保湿用のクリームだけを塗っているので、唇や顔が汚れることを気にしなくていいシリルは容赦なくミランダの唇を奪ってきた。
「んっ……」
「……ミランダ、かわいい」
口づけの合間に囁いたシリルはとろんと目を潤ませるミランダを見て微笑み、彼女が纏う薄手のネグリジェの肩口にそっと触れた。
「本当に……ああ、過去の自分が憎らしいよ。ミランダのことを大切にできなかったうえに、なにも覚えていないのだから!」
シリルは過去の自分に呪詛を吐き、ミランダをぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。彼はまだ、二年前の夏にミランダを無理矢理襲ったことを後悔しているようだ。
「ミランダは、怖かったよな? ……こういうことをすると、やはり二年前のことを思い出してしまう?」
「大丈夫ですよ、もうあなたの気持ちもわかっていますから」
ミランダは微笑んだものの、ふと疑問がわいてきた。
「……そういえばあの夜、あなたはどうやら目が見えていなかったようですけれど、私とわかっていて抱いたのでしょうか」
「……毒矢に倒れたあとのことはいまだに記憶がないのだけれど多分、夢を見ていると思ったんだろう」
シリルはミランダの胸元に顔を擦り付けながら、ぼそぼそと答えた。
「熱でぼんやりする視界で、ミランダが見えた。だからきっと、いつものことだと思って……」
「いつも?」
「あっ」
しまった、とシリルが息を呑むが、ミランダはぐいぐいと詰め寄った。
「いつもって……まさか、あなたってその頃から夢で……」
「仕方ないだろう! 僕はずっと君のことが好きで……でも離ればなれになったから、夢でもないと会えないから……」
「……」
「……幻滅した?」
ミランダの胸に顔を突っ込んだままくぐもった声で言うので、ミランダはくすっと笑ってからシリルのつむじを撫でた。
「いいえ。それくらい好きでいてくれたのなら……まあいいかな、と思えます」
「ミランダ、優しい……愛している……」
シリルは嬉しそうに言ってから、ミランダの胸に頬ずりしつつ顔を上げた。
「……ずっとずっと、君のことが好きだ。君を愛して大切にして、セドリックのことも守ってみせる」
「シリル様……」
「僕と結婚してくれて……僕の過ちを受け入れてくれて、ありがとう、ミランダ」
シリルがそう言って微笑むので、ミランダも微笑み返してから夫の頬に唇を寄せた。
「私こそ。私のことを守ろうとしてくれて……本当にありがとうございます。愛しています、シリル様」
「ミランダ……」
互いに愛と、感謝を述べた二人の視線が絡まり、唇が重なる。
触れあう体温が、愛おしい。
すれ違いの果てに愛する人と手を取る未来にたどり着けたことが、たまらなく嬉しい。
「……行こうか、奥さん」
深く甘い口づけの末に、シリルは緑色の目を情熱的に燃やしてミランダにささやいた。
「君を腕に抱いて寝るのは、結婚してからと決めていた。……それに、二年前の挽回もしたい」
「ふふ。……優しくしてくれますか?」
「うん、めいっぱい優しくする。だから、いい?」
シリルに甘く乞われて、ミランダに否と言えるはずがない。
「……喜んで。私の旦那様」