イケメンだらけのドラッグストアでいつのまにか全員から執着されていました
薬局長、今日も胃薬が手放せません
私は薬師寺天音(やくしじあまね)、二十八歳。
大手ドラッグストア『ドラッグラベール』の所沢駅前店で、地味に薬剤師をやっている。一応、立場としては「薬局長」ということになっているけれど……。
同期の中で一番の出世頭といえば、白鳥駅前店の薬局長、氷室涼香ちゃん。入社当時からの友達である彼女だけど、どうやらあちらの陣内エリア長にご執心らしい。
……陣内エリア長…お気持ち、めちゃくちゃ分かります。あんな超絶可愛いコスメ担当ちゃんや新人薬剤師ちゃんに振り回されているなんて、胃が幾つあっても足りないですよね…。
なのに、なぜか私も同じような事態に陥っていた。
私には華やかな派手さなんて一切ない。ちょっとあるソバカスだって、毎朝一生懸命メイクで隠しているくらいだ。それなのに……何故か! 何故か!!
職場のイケメンたちが私に話しかけまくってきて、私の胃はすでに限界を迎えつつあるのだった。
どうしてこんなことになっちゃったのかな……!?
普段イケメンに話しかけられることなんてない人生だったから、心臓のドキドキが全然止まらない。
だいたい私は、男性アイドルグループ『Milk』の熱狂的な追っかけなのだ。現実の男の人なんて……と思っていたのに、目の前にいる職場のイケメンたちが全員Milkのメンバーに似ているってどういうことなの!?
(尊すぎて胃が爆発しそうだわ……!!)
頭の中で一人悶絶していると、いきなり目の前に影が落ちた。
弟系イケメン新人薬剤師の橘陸(たちばなりく)24歳だ。
「天音さん! 僕、今朝の開局準備も調剤チェックも一番に終わらせました! 褒めてください!」
大型犬のように距離ゼロで迫ってくる。ち、近い! 距離感が近すぎてどうにかなりそうだわ……!
ど、どうしましょう、彼の首元から漂う爽やかなシャンプーの香りが鼻について離れない。
「橘くん、よくできたけどちょっと離れ……」
焦る私の隙を突くように、調剤室のドアがすっと開いた。
うちの会社のドミナント戦略のおかげで目と鼻の先にある、所沢南店の薬局長・一ノ瀬蓮(いちのせれん)28歳が入ってきたのだ。
彼は私の同期薬剤師で、入社当時からなぜかよく話しかけてくれる。周りの女子社員からの視線が痛いから本当にやめてほしいのだけれど……なぜ私なのかは本当に分からない。
「天音ちゃん、相変わらず地味なメガネして。そんなにカリカリ仕事してるとシワが増えちゃうよ? ほら、僕の店舗に異動してくれば僕が毎日甘やかしてあげのに」
白衣を着崩したキザな動作で、私の髪にそっと触れてくる。
ど、どうなってるのかしら……尊すぎる……顔が良い……!
私が甘いパニックに陥りかけたその時、調剤室の空気が一瞬でピリッと凍りついた。
「……朝から賑やかですね。一ノ瀬薬局長、自分の店舗の棚卸し数値は修正できたのですか?」
低く響く厳格な声。当エリアの統括、神楽坂迅(かぐらざかじん)エリア長だ!
最年少エリア長の座こそ陣内エリア長に譲ったものの、彼は我が社が誇る超エリート薬剤師。あちらの優しい(?)陣内エリア長とは違い、隙のない黒スーツを着こなした超スパルタ上司である。
「っ……神楽坂エリア長。相変わらずお厳しいですね……」
一ノ瀬は引きつった笑みを浮かべると、そそくさと自分の店舗へ戻っていった。特に用はなかったのね……。
今は一番大変な棚卸しの時期で、私自身がいっぱいいっぱいだというのに、怒涛のようにイケメンたちが押し寄せてきてパニック寸前だ。冷や汗をかく私に向かい、神楽坂エリア長が至近距離で静かに口を開く。
「薬師寺薬局長。先月の調剤ミスゼロ、および在庫管理の精度……見事です。……ところで、今夜は空いていますか? どこかおいしいお店でも…」
(……ひえっ!! エリア長からのサシの説教飯!? 今月の売上ノルマについて詰められるやつだ……!!)
あまりの恐怖に、私は半泣きになりながら返事をした。
「は、はい! 喜んでお供します……っ!」
要件だけを簡潔に告げると、神楽坂エリア長はどこか満足そうに微笑み、去っていった。
それを見送るやいなや、橘くんが私の袖を引っ張って騒ぎ出す。
「天音さんずるい! 僕ともご飯行ってくださいー!」
「もう無理……」
私はその場に膝から崩れ落ちた。
「涼香ちゃん……そっちのエリア長も美人さんたちに囲まれて大変らしいけど、うちの店舗も別の意味で胃が持ちそうにないよ……」
私は白衣のポケットから、愛用の『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、水も飲まずにそのまま胃へ流し込んだ。
大手ドラッグストア『ドラッグラベール』の所沢駅前店で、地味に薬剤師をやっている。一応、立場としては「薬局長」ということになっているけれど……。
同期の中で一番の出世頭といえば、白鳥駅前店の薬局長、氷室涼香ちゃん。入社当時からの友達である彼女だけど、どうやらあちらの陣内エリア長にご執心らしい。
……陣内エリア長…お気持ち、めちゃくちゃ分かります。あんな超絶可愛いコスメ担当ちゃんや新人薬剤師ちゃんに振り回されているなんて、胃が幾つあっても足りないですよね…。
なのに、なぜか私も同じような事態に陥っていた。
私には華やかな派手さなんて一切ない。ちょっとあるソバカスだって、毎朝一生懸命メイクで隠しているくらいだ。それなのに……何故か! 何故か!!
職場のイケメンたちが私に話しかけまくってきて、私の胃はすでに限界を迎えつつあるのだった。
どうしてこんなことになっちゃったのかな……!?
普段イケメンに話しかけられることなんてない人生だったから、心臓のドキドキが全然止まらない。
だいたい私は、男性アイドルグループ『Milk』の熱狂的な追っかけなのだ。現実の男の人なんて……と思っていたのに、目の前にいる職場のイケメンたちが全員Milkのメンバーに似ているってどういうことなの!?
(尊すぎて胃が爆発しそうだわ……!!)
頭の中で一人悶絶していると、いきなり目の前に影が落ちた。
弟系イケメン新人薬剤師の橘陸(たちばなりく)24歳だ。
「天音さん! 僕、今朝の開局準備も調剤チェックも一番に終わらせました! 褒めてください!」
大型犬のように距離ゼロで迫ってくる。ち、近い! 距離感が近すぎてどうにかなりそうだわ……!
ど、どうしましょう、彼の首元から漂う爽やかなシャンプーの香りが鼻について離れない。
「橘くん、よくできたけどちょっと離れ……」
焦る私の隙を突くように、調剤室のドアがすっと開いた。
うちの会社のドミナント戦略のおかげで目と鼻の先にある、所沢南店の薬局長・一ノ瀬蓮(いちのせれん)28歳が入ってきたのだ。
彼は私の同期薬剤師で、入社当時からなぜかよく話しかけてくれる。周りの女子社員からの視線が痛いから本当にやめてほしいのだけれど……なぜ私なのかは本当に分からない。
「天音ちゃん、相変わらず地味なメガネして。そんなにカリカリ仕事してるとシワが増えちゃうよ? ほら、僕の店舗に異動してくれば僕が毎日甘やかしてあげのに」
白衣を着崩したキザな動作で、私の髪にそっと触れてくる。
ど、どうなってるのかしら……尊すぎる……顔が良い……!
私が甘いパニックに陥りかけたその時、調剤室の空気が一瞬でピリッと凍りついた。
「……朝から賑やかですね。一ノ瀬薬局長、自分の店舗の棚卸し数値は修正できたのですか?」
低く響く厳格な声。当エリアの統括、神楽坂迅(かぐらざかじん)エリア長だ!
最年少エリア長の座こそ陣内エリア長に譲ったものの、彼は我が社が誇る超エリート薬剤師。あちらの優しい(?)陣内エリア長とは違い、隙のない黒スーツを着こなした超スパルタ上司である。
「っ……神楽坂エリア長。相変わらずお厳しいですね……」
一ノ瀬は引きつった笑みを浮かべると、そそくさと自分の店舗へ戻っていった。特に用はなかったのね……。
今は一番大変な棚卸しの時期で、私自身がいっぱいいっぱいだというのに、怒涛のようにイケメンたちが押し寄せてきてパニック寸前だ。冷や汗をかく私に向かい、神楽坂エリア長が至近距離で静かに口を開く。
「薬師寺薬局長。先月の調剤ミスゼロ、および在庫管理の精度……見事です。……ところで、今夜は空いていますか? どこかおいしいお店でも…」
(……ひえっ!! エリア長からのサシの説教飯!? 今月の売上ノルマについて詰められるやつだ……!!)
あまりの恐怖に、私は半泣きになりながら返事をした。
「は、はい! 喜んでお供します……っ!」
要件だけを簡潔に告げると、神楽坂エリア長はどこか満足そうに微笑み、去っていった。
それを見送るやいなや、橘くんが私の袖を引っ張って騒ぎ出す。
「天音さんずるい! 僕ともご飯行ってくださいー!」
「もう無理……」
私はその場に膝から崩れ落ちた。
「涼香ちゃん……そっちのエリア長も美人さんたちに囲まれて大変らしいけど、うちの店舗も別の意味で胃が持ちそうにないよ……」
私は白衣のポケットから、愛用の『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、水も飲まずにそのまま胃へ流し込んだ。