ただ今の先に、何度でも恋に落ちる2人がいる。
プロローグ
プロローグ

午前6時。

冬の朝は、まだ静かだった。

厚手の遮光カーテンは開いている。それでも、レースカーテン越しの光は、部屋の奥までは届いていない。

加湿器が小さく音を立てている。

コーヒーの香りが、寝室にゆっくり広がっていた。

「凛、起きなぁ。6時になるよ」

ベッドの中で目を閉じたまま、私は純の腰に腕を回した。

「あと10分だけ。このままでいたい」

純は返事をせず、手にしていたマグカップをテーブルに置いた。

私のカップと、触れ合わないように少しだけ間を空けて。

そういうところは、昔から変わらない。

私が気づいていることを、純はたぶん知らない。

「……もう10分経ったよ」

「うぅぅん、起きますですぅ……」

そう言いながら、私はまだ純の腰に腕を回していた。

「ベッドに座って飲めばいいよ。まだ眠いでしょ」

「うん」

純が差し出してくれたマグカップを受け取る。

ちょうどいい温度だった。

私は純の隣に座り、肩に寄りかかった。

二人でコーヒーを飲む。

言葉がなくても、気まずくならない。

何かを話さなければと思うこともない。

一緒に暮らすようになってから、こういう時間が増えた。

純が何を考えているのか、全部わかるわけではない。

私の気持ちだって、いつも言葉にできるわけではない。

それでも、少しの表情や声の調子から、伝わってくることがある。

わからないときは、聞けばいい。

違うと思ったら、違うと言えばいい。

そうしても二人の間は壊れないと、今は知っている。

私は純の背中に顔を隠した。

「どうしたの?」

「寝起きの顔、見ないで」

「もう見てるけど」

「見てないことにして」

純が小さく笑った。

私のカップを受け取り、テーブルに置く。

それから私を抱き寄せた。
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