孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
最初の手紙に書かれてあった、食材の調達方法について丁寧に書かれている。

そして由香自身の昼食はホテルで摂るようにともあった。

アランが指定する番号に備え付けの電話を使ってかけると、数秒と経たずに落ち着いた男性の声が「ご用件をお伺いいたします」と答えた。

「あの、アラン・ウィルソンの部屋の者ですが……今夜、彼の部屋で料理をすることになりまして」

「はい。ウィルソン様から窺っております。食材を指定いただけましたら、こちらで目利きして手配いたします」

「ありがとうございます……でしたら……――――」

由香は、メモした内容を伝え、ふうっと息を零す。
自分の足で買いに行かないなんて変な感じだ。

――――食材は昼過ぎになってホテルの部屋に届いた。
由香は新鮮な野菜や肉類を受け取ってリビングへと移動し、オープンキッチンのシンクに視線を落とす。

こちらは水滴ひとつ残っておらず、まったく使われた形跡がない。

そもそもホテルという特性もあってかアランの私物は非常に少なく、その日のうちにでも引越せてしまいそうなほど簡素。

ーー何だか、いつでも姿を消してしまえそうな人。

これまで縁のなかった暮らしぶりに刹那的なものを由香は感じていた。

そんな感情を抱きながら、冷蔵庫に並ぶ栄養ゼリーの存在を思い描きながら由香はアランのための食事を作る始める。

丁寧に、胃を驚かせないように。
少々苦手でもサラッと食べれる程度のものを。

そうして用意したディナーと共に帰りを待っていると、彼は日が完全に沈む前に帰ってきた。

「なんだ。居たのか」

アランは上着を雑にソファへ掛けながら意外そうに言った。

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