孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜

⑦結婚に求めるものって、なんですか?

「由香!良かった。久しぶりだな!」

オフィスビルに着くと、赤い薔薇の花束を持った亮介の姿があった。

カジュアルなジャケットに白のVネックにスラックスという格好で、涼やかな瞳に弧を描いている。

ほぼ一年ぶりとも言える姿は、服の趣味も少し突拍子のない所も以前と殆ど変わらなかった。

しかしその突拍子のなさが、今は居心地が悪い。道を行き交う人々の視線を受けており、由香はひとまず会社から亮介を遠ざけるべく声をかけようとしたが、夜のオフィス街で亮介は突然片膝をつき花束を差し出した。

「やり直したい。やっぱり俺には由香が必要なんだ。日本に帰って結婚してくれ」

「と、突然なに……?」

いきなりのプロポーズに頬が引き攣る。

通行人に注目されているのは明らかで、実のところこういった視線を浴びるのは嫌いな質なのだ。

しかし問題はそれよりも……ーーーー

「どうしてここが分かったの……?ピアスが見つかったって本当?」

「なんだよ。せっかくのプロポーズなのに、第一声がそれってどうなの」

亮介は立ち上がるとを不満そうな顔をした。

「勝手にしてきたんでしょう……ピアスが見つかったって言うから来たのに……そうじゃなかったら、こんなこと怖過ぎて会ったりしない」

由香は手の平を握り締めて告げた。

同行すると言ってくれたアランは離れた場所で待機してもらっている。

一人じゃないと思えば勇気が出た。

「怖いって、酷いな……喧嘩別れして後悔してたんだ。だからお前のピアス見つけた時にこれがきっかけで話が出来たらと思ってずっと待ってた」

「後悔したんだ……」

突然の来訪も、会社の待ち伏せも、普通に考えて壊すぎるのに、亮介は分かっていない。

あの時と同じで、一方的に感情をぶつけられ苛立ちから溜息が溢れた。

「後悔したよ。由香以上に家事できる子なんていないしさ、飯もお前が一番上手くて、自分がどれだけ恵まれてたか理解したんだ。なぁ、俺がアメリカ行き反対したからこうなったんだろ?どうしてもってなら待つし……」

亮介本人は褒めてるつもりなのだろうが、それでは家事は女がやって当然だという意識が丸見えだ。

なにより、まだ由香の気持ちが亮介に残っていると過信しているのも迷惑な話である。

別れ方を振り返る瞬間は確かにあったが、けれど由香はもう前に進んでいて、そしてやはりと言うべきか、別れて正解だったと確信する。

「待たなくていい……」

由香は呟いた。

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