孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
ピラフを炒めるフラインに視線を落としながらひと際大きく揺すり、うちに溜まった由香自身の熱を誤魔化す。

そうして食事が出来上がった頃に、再びスマホが震えた。

亮介からだ。

『今夜は駄目かな?会社の前で待ってる』

――会社?まさか……いや、なんで知ってるの?

「どうした?」

固まっているとアランに声を掛けられハッとする。

「いえ、なんでもないです。さ、温かいうちに召し上がってください」

由香はエプロンを脱ぎながら双眸を細める。

思えばまだ業務中なのだ。メモを手にアランの体面に座ったものの、しかし目の前の彼はそれを許さなかった。

「その顔はあの夜と同じだ。何かあったんだろ?困ってるなら言えよ」

お互い、あの日の夜のことはずっと触れていなかったのに、アランは同じだと言って由香を逃がさない。

答えなければ食事を摂ってくれそうにない。

「……元彼が、こっちに来てるらしくて……失くしたつもりだった祖母の形見のピアスを見つけたから、届けたいと……」

おずおずと事情を説明すればアランはあからさまに不機嫌な顔をする。

「はぁ……ご苦労なことだ。会いたくはないんだな?」

「はい。でも、ピアスは気掛かりですけど、会社まで来られてるのも気になってます」

「なら、俺が同行するよ」
「え?」

「君はうちの社員だ」
「でもプライベートですよ」

「細かいことは良いだろ。食事をしてから行こう。君の都合を聞かずに勝手に来たんだ。待たせておけばいい」

そう言った彼は、目元の隈が以前より改善されているのに、相変わらず悪役じみた笑みを零していた。
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