孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
だというのにアランは、気怠げに笑う。

「ハッ。たとえメイド扱いのクソ発言だろうが、プロポーズはプロポーズだろ。君の人生の分岐点だったことには違いないはずだ」

「それは……」

分岐点、と言われると確かにそうだ。
双眸を伏せ考え込んでいるとアランはさらに言った。

「だから今、それだけ落ち込んでいるんじゃ?」

確かに。由香の人生において、否定したくとも亮介はただの通過点じゃなかった。

唐突な人生設計に驚いたが、由香だっていずれは結婚するかもぐらいに意識した瞬間はあったのだから。

「そうですね……」

丁度タイミングが悪く亮介を疑い始めた時期に、キャリアの転換点が重なった。

喧嘩にまで発展してしまったが、もしかしたら自分の思い込みが強かったのではと立ち止まって振り返ることもあった。

「お互い譲れなかったから、彼も自分本意な言葉になったのかもって信じたくなったり……あの時もっと話し合えていたらって考えることは、正直あります……」

アランは由香の言葉を待つように、ウィスキーに口をつけて視線を流す。

「でも、終わったことです。私にとって今、一番の問題は、……帰国したら私が間違ってたって認めてしまいそうって所なんです」

俯きながらグラスを揺らし由香は溜息を零した。

「だから早く観光ビザに切り替えて、とにかく仕事を探さなきゃ……でも考え出すと疲れちゃって。今夜は、飲まなきゃやってられないんです」

由香はグラスの中身を一気に飲み干して、眉間に皺を深く刻んだ。

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