孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜

②バーで出会った彼

「へぇ。プロポーズ断ってまでこっち来たのに、仕事がなくなったのか」

カウンターに並ぶ二人。
由香が渡米のきっかけと帰国を躊躇う理由を話していると、アランに鼻で笑われた。

「プロポーズって言うのやめてください。喧嘩です。ロマンチックの欠片もないのに、数えたくないです」

次に会うかどうかも分からない他人だからと明け透けに語った恋人との別れ。
それをアランはプロポーズと言ったので由香は今、顔を顰めている。

なにせ元恋人の亮介は、由香が渡米の相談をした時に、自分の人生設計が狂うから困ると言い出したのだ。

『次の春には結婚してさ、子供が出来たら由香には子育てが落ち着くまでパートとか、家庭中心に働いてもらいたいし。うちの母さんもそうしたし、何でも早い方が良いって……由香は家事が得意だろ?それに子供も好きじゃん。絶対家庭向きだよ。俺は由香と結婚したいんだ』

それを聞いて、別れようと決意した。
亮介の話は由香の意思を無視した内容だったからだ。

それに、これまで家族と連絡頻度の高い亮介に対し家族思いな人という印象が陰り、マザコン疑惑が浮上した瞬間でもあった。

彼の紡ぐ、その人生設計は、誰と一緒に考えているものなのだろう、と。

亮介は明るくて、ちょっとだらしないところもあったが、いつも優しかった。

職場で出会って告白され、互いの家を行き来するようになってからは、家事が苦手な彼のために食事を作り置きしたり、溜まった洗濯などの家事を一緒にしたりと愛情表現のつもりだった。

しかしそれが日常になっていて、彼が好きなのは自分ではない家事をしてくれる女なのではと疑い始め……そんなタイミングでの、あの言葉。

――あれはプロポーズなんかじゃない。

母親の意思が反映された上に独善的な内容。
そこには都合のいい家政婦扱いされる未来が透けて見えた。

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