極東4th
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「イヤなもんになったな」

 大空蝕を囲む形で、大勢の魔族が集まる中──隣に来たのは、イデルグだった。

 極東の1st。

 このエリアの大空蝕を落としたのだから、本来ならば彼が中央の位置に来るべきだったのだろうか。

 ただ、真理の反対隣には、二人ほど限定解除組がいたが。

『イヤな男になったわね』

 彼が答えるより先に、鎧の中で貴沙が舌を出す。

 刹那。

 イデルグは、はっと真理を見た。

 貴沙の声が、彼に聞こえるはずなどない。

 しかし、彼女は、既にやらかしていたのだ。

 この状態のまま、イデルグを──暴いたのである。

 大空蝕の映像が、津波のように甦る。

 彼の記憶ではない。

 イデルグの記憶だ。

 魔族の力は魔族には効きづらいが、限定解除状態ならば、一般の魔族を暴くことなど造作もないのだろう。

 闇がひとつ落ちる。

 先代のトゥーイか。

 金4、魔3という空に、先に到着したのは金の増援。

 入り乱れる世界。

 逃げたのはベルガー ──現在の2ndだった。

 イデルグが、怒号をあげる。

 だが、ベルガーは戻ることはない。

 残されたのは、父とイデルグ。

 死んだのは父。

 ボロボロになった鎧で、墜落していったのはイデルグ。

 そこで暗くなる意識。

「カシュメル卿…お前は何になったんだ?」

 真理の中の貴沙を感じたのか、心底不思議そうに問いかけられる。

 だが、真理の視線は彼の向こうを見ていた。

 飄々と突っ立っている、ベルガーを。

『卑怯者の腰抜け野郎』

 全ての代弁は──貴沙がやってくれた。
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