極東4th
 不幸はどこにでも現れるもので。

 早紀を引き取ってくれた、後見人でもある優しいおじさまとおばさまは、一昨年不慮の事故で亡くなってしまった。

 屋敷に残されたのは、居候の早紀と、この家の若き当主となった少年。

 それが。

 すぅっと。

 空気の動く音がした。

 何故だろう。

 早紀には、その音もなく扉の開く気配が分かるのだ。

 引っ張られるように、気配の方を向いてしまう。

 真っ黒な。

 早紀と同じように真っ黒な制服を着た、真っ黒な髪の少年が現れた。

 鹿島真理(シンリ)。

 それが──この屋敷の当主の名前。


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