窓際の高木君

第一章 窓際の高木くん

高木くんが、また窓の外を見ている。

返却された本の裏表紙を開いたまま、私は視線だけを上げた。

窓際のいちばん奥。
四人掛けの机を一人で使っている彼の前には、薄い文庫本が置かれている。

さっきから、同じページだった。

外で、ボールを打つ軽い音がする。

少し遅れて、女の子たちの声。

図書室から見下ろせるテニスコートでは、白い線の内側を、紺色のジャージが行き来していた。

そのうちの誰かを見ているのだろうか。

そう思ってから、私は手元へ目を戻した。

私が知ったところで、どうするわけでもない。

貸出カードの日付を確かめて、本を閉じる。

背表紙を指でなぞったとき、窓際で椅子のきしむ音がした。

見ないつもりだったのに。

私は、もう一度顔を上げていた。
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