きみが窓を見なくなるまで
図書室の扉を開けると、紙と、床を拭いたあとの匂いがした。

「佐々木さん、お疲れさま」

カウンターの向こうで、図書担当の先生が顔を上げる。

「お願いします」

当番用のノートを受け取り、日付の欄に名前を書く。

佐々木妃菜。

最後の一画まで書いて、ペンを置く。

ここでは、話題を探さなくてもいい。

本を返す人が来たら、受け取る。
借りる人が来たら、手続きをする。

何もなければ、本を読んでいてもいい。

黙っていることに、理由が要らない。

私は鞄から文庫本を出して、カウンターの端に置いた。
< 9 / 385 >

この作品をシェア

pagetop