あなたと見つけた、幸せのかたち
第2話 告白は、涙の味
「課長、どうしたんですか?」
美沙希が、デスクに着いた直哉の顔を覗き込んで言う。
「最近、表情が違いますよ」
ウインクばっちん、美沙希が笑う。
「いや、別に何も」
「本当ですか? 当てましょうか?
ずばり、女性関係!」
「ち、違うよ……」
直哉は、美沙希から目を逸らした。
でも、にやけてしまう。
美沙希も、メガネのブリッジを上げてにやにやした。
少し、気まずく、気恥ずかしかった。
スキップしそうな足取りで、給湯室まで行くと、ひとりで鏡を見る。
なんだか、はつらつとしている。
理由は自分でもわかった。
直哉は、今、恋をしている。
「菜月ちゃん……」
自分の話をよく聴いてくれ、優しく微笑んでくれる彼女。
コーヒーを淹れたり、食器を洗ったり、お客さんと話したり、レジに立ったり。
笑ったり、真剣な表情。
次第に気になって。目で追うようになった。
気づいたら、本気になっていた。
会うのが楽しみだった。
終われば、彼女に会えると思うと、自然と仕事に身が入った。
「あぁぁ、なんて、かわいいんだ!」
エプロン姿の天使に思えた。
天使の輪っかさえ、見える気がした。
「いらっしゃいませー!」
菜月がコーヒーショップで、出迎えてくれる。
その日、直哉は決めていた。
菜月に告白することを!
マスターが外した隙。
ちょうど、二人きりになった。
──キタ、キタ!
菜月を見て緊張する。それを誤魔化すように、コーヒーを二、三口
飲む。
直哉は意を決した。
「菜月ちゃん、いや──菜月さん。
好きです!
《《私と》》、つきあってください」
菜月はとても驚いた。
直哉が自分のことを好きだと言う。
──どうしよう?
しかし、想像できなかった。
彼と恋人同士になるなんて。
「ご、ごめんなさい! でも、お気持ちはとても、嬉しいです」
直哉は、衝撃で石のように固まった。
菜月は申し訳なさそうに、直哉を見た。
翌日。
「おぉっと、やば、危ない!」
会社で、パソコンの数値入力をミスしそうになる。
「おおお! ハンコ忘れるとこだった!
てか、あの書類はどこ?」
「どうしたんですか、課長?」
美沙希が寄ってくる。
「なんか、死者みたいな顔してますよ?」
「……ほっといてくれ」
「ははーん。なにかありました?」
顎に手を当て、なぜか目を輝かす美沙希。
「なんもないよ!」
つい、怒鳴りそうになった。
男子トイレの個室で、直哉は頭を抱えた。
──もう、帰りたい。てか、帰らせて……。
まさか、ふられるなんて……。
27年間の人生で、ふられたことは一度もなかった。
「あぁぁ、菜月ちゃん……!」