あなたと見つけた、幸せのかたち
第4話 ときめきの、鼓動
「いらっしゃいませ!」
菜月の声が、今日もコーヒーショップに響く。
コーヒーの香りが、今日も店内に漂っている。
また、通うことになった直哉は、コーヒーの味を噛み締めていた。
「やっぱり、うまい!」
菜月は、もちろんいつもかわいい。かわいすぎる。
エプロンがとてもよく似合っている。今日も、天使だ。
──あぁ。幸せだな〜。
そのとき、偶然、マスターと菜月が話しているところを、聞いた。
「マスター。佐伯《さえき》さんがしつこくって、困ってるんです」
「う〜ん。少し、様子を見ようか」
「はい……」
佐伯というのは、常連客の男性だった。直哉より、少し年上だろうか。
言われてみれば、菜月と話しているところを何度か見たことがある。
まさか、菜月に言い寄っているとは。
「菜月ちゃん。ごめん、聞こえちゃった。
佐伯さんのこと……。
俺に、何か、力になれないかな」
「え? あ、大丈夫! 悪いですよ」
菜月は微笑んだ。
「菜月ちゃん……」
そう言われると、引くしかなかった。
でも、心配だった。
菜月の笑顔は、心優なしか作っている感じがした。
強がっている気がした。
菜月が勤務を終えた夜。
外に行くと、少し歩いた暗がりで佐伯が待っていた。
暗い顔に無精髭。ヨレヨレのネズミ色のパーカー。
清潔感があまりない。
「菜月ちゃん。今日こそ、僕と付き合ってよ!」
「困ります、佐伯さん」
「そんなこと言うなよ! 菜月ちゃんだって、本当は僕のこと好きなくせに」
「そ、そんなことは……」
佐伯が歩み寄ってくる。
近づく足音。
後ずさる、菜月。
「きゃ! いや! 誰か、助けて!」
コーヒーを飲み終え、歩いていると、菜月の悲鳴が聞こえた。
「おい、なにしてる?」
直哉の声が、低くなる。
菜月に触れようとしていた佐伯の腕をきつく掴み上げる。
「──俺、コイツとつきあってるんで」
直哉は、佐伯にすごんだ。
「ひぃ!」
佐伯は案外あっさり、逃げていった。
「ふぅ……」
「な、直哉さん? こ、怖かった……」
菜月は、涙ぐんでいる。
直哉は慌てた。
「ご、ごめん、とっさに、変なこと言って!」
直哉は、すまなそうにしているが、
菜月は、なぜかドキドキしてしまっていた。
帰宅し、菜月はTシャツにショートパンツに着替えた。
ピンクを基調とした、かわいらしい部屋だった。
しばらくして、ベッドの上でハート型のクッションを抱きしめる。
「今日の、直哉さん、かっこよかったな」
直哉の勇姿を思い出し、ため息が漏れる。
「まだ、間に合うかな……?」
言ってから驚く。
「私、なに言ってるんだろ?」