あなたと見つけた、幸せのかたち

第5話 海辺の、告白


 菜月は、それから、直哉が気になるようになった。
 コーヒーショップに来てくれると嬉しいし、次はいつ来るのか気になった。

 そんなある日。
 直哉が、美沙希と歩いている。
 それを菜月は見て、思わず足を止める。
 胸がなぜか、キュンとし、傷んだ。
 ──だ、誰? どんな関係?
 美沙希が直哉を見上げて笑う。
 直哉も楽しそうに笑い返す。
 二人とも、スーツ姿だ。
 会社のひと?
 ずいぶんと親しそう。
 胸が痛み、声をかけることが、どうしてもできなかった。

 菜月は、長年の友だちの藤本彩花《ふじもとあやか》にLINEした。
『気になる人ができたの』
『え? どんな人?』 
『洋菓子メーカーの、課長だっていってた』
『課長! エリートじゃん!』
『うん。でも、そういうのは関係なくて』
 彩花は、親身に聞いてくれた。
 人の話を聴くのが得意な菜月は、自分のことを話すのが苦手だった。
 ただ、彩花は違った。
『その……一回フっちゃって』
『え! どうして?』
『そのときは、なんとも思ってなくて』
『ふーん。今は違うんだ?』
『どうしたら、いいと思う?』
『コクっちゃいなよ!』
『え〜〜!』

 菜月は、勇気を出すことにした。
 次の勤務日。
 店で二人きりになったときに、直哉に言った。
「今度、お食事でも、行きませんか?」
「え? 本当に?」
 二人は、連絡先を交換した。
 合う休みを探した。
 店は、直哉のおすすめの店に決まった。

「こ、こんないいレストラン、よかったんですか?」
「いいんだよ」
 高級レストランに、二人はいた。
 窓の外に、青い海が見える。
 直哉がこの日のために、予約したのだ。
「わ、私、浮いてないですか?」
 菜月は、ピンクのワンピースを着て、髪をアップにしていた。
 直哉はスーツを着ている。
「かわいいよ」
「……もう」
 白いクロスのテーブルに、ワイングラスと、コース料理が運ばれてくる。
 スープ、前菜……。 
 皿の面積に比べ、料理は少しずつ。
「いただこうか」
 直哉が傾けるグラスが光る。
「おいしい! こんなの、初めてです」
「本当? 嬉しいな」
 普段、仕事の愚痴ばかり話す直哉だが、この日は、菜月が話し終えるまで口を挟まず、目を見て、彼女の話をよく聴いた。

 今日の直哉は、話しやすかった。
 菜月は、ホッとした。
 ──直哉さんって、こんな一面もあるんだ。
 
 食後、海辺を歩いた。
 菜月は、薄手の赤いカーディガンを羽織っている。
 潮騒の音を聞きながら、潮風を感じ歩く。
 夕日がとても、綺麗だった。
 幸せな気持ちを、二人は覚えていた。
 どちらからともなく、手を繋いだ。
 直哉は少し時間がかかったが、
 菜月に向き合うと、

「好きです。
 私と、つきあってください」

 二度目の、告白をした。



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