ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 彼は最初からわたしとは結婚できないとわかっていたわけで、最初から別れるつもりでいた。
 役不足というよりは、あの人は最初から私を通り過ぎるつもりだった。

「まあ、要するに」
 自嘲するように口元を歪めると、ひなちゃんが「もったいたない」と被せてきた。

「そんな人に深結さんはもったいたないですよ。別れてよかった」

「ひなちゃん……ありがと」

 自分でも意外なほど明るい声が出た。彼女の笑顔につられたのかもしれない。

 彼女はぱっと顔を輝かせて「そんな奴、次、行きましょ次」と言い、それからふたりでくすくす笑った。

 そうだよね。いつか、この傷が癒えたら勇気を出してみようかな。そう思うと、ふと頭の隅に九条先生のいたずらっぽい笑みが浮かんだ。

〝俺がいるじゃないですかー〟

 そんな声が聞こえた気がしてプルプルと体を震わせる。

「深結さん? 寒いですか?」

「あー違うの違うの。これは武者震いよ」

 あははと笑ってごまかしながら、とほほと肩を落とした。

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