ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 彼は眩しそうに細めた瞳で私を愛おしそうに見つめると、長い腕をさらに私の腰に回し、その胸の中にぎゅっと引き寄せた。

「まだ夜は明けたばかりだよ。まだ早いから、もう少しこうしてて」

 私の首筋にうずめられた彼の髪がふわふわと肌を刺激する。昨夜の強引な雄の気配はどこへやら、今の彼は、まるで甘えるように私にぴったりと身を寄せている。

 ――いやいやいや、ちょっと待って!

 じわじわと覚醒していく脳内に、昨夜の記憶の断片が凄まじい勢いでフラッシュバックする。

 強引なキス、外されたかわいさの仮面、剥き出しの独占欲、そして――。

 隣から伝わる男らしくて温かい体温と、腰に回された腕の重みが、それが夢ではない現実だと残酷なまでに告げていた。

 失恋の痛手を負った勢いとはいえ、年下の、しかも年下の医師と一晩を共にしてしまうなんて。

 う……っ、う、嘘……っ!

 あまりの想定外の事態に、私の頭は完全にフリーズした。

 押し寄せる大パニックとショックに耐えかね、私は彼の胸を思いきり突き飛ばすと、声なき悲鳴を響かせた。
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