ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
『あ、いや……』

 彼女は走るようにその場を離れた。

 ひとりその場に遺された俺は、張り手をされた気分で呆然と立ち尽くした。
 面と向かって女性に怒られたのは、正直初めてと言っていい。

 医師として俺は仕事に手を抜いたつもりはなかった。
 しかし、あれだけはっきり言うのだから、そう見えるのかもしれない。

 その後、気になって自分の態度についても友人に聞いてみると彼は『その通りだろうな』と笑った。
 感情を表に出さない俺は、とっつきにくいと見えるはずだと彼は言う。
『その彼女は間違っていないぞ』

 看護師の待遇についても調べた。ユニフォームは、医師である俺の場合は病院が用意するし、クリーニングも病院が出す。看護師への支給が二枚きりだとは知らなかった。彼女たちの給料からすればユニフォーム代は決して安くはないということも。

 彼女の言う通りだった。

『御曹司だからって、仕事を舐めないでください』

 金銭感覚の違いを知ろうとせず、優秀だ優秀だと言われて、そんなつもりはなくても天狗になっていたのか。女性は皆、俺みたいな金のある医者が好きなんだろう? くらいに見ていたかもしれない。
< 47 / 104 >

この作品をシェア

pagetop