ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!

 九条先生のマンションを抜け出したのは、朝七時過ぎだった。

 明け方、おはようのキスをして、私を抱き寄せたまま先生は寝てしまい、その隙にそっと寝室を飛び出した。

 バスルームに干していたワンピースには落ちきらないシミが残っていて、そのまま通りを歩く勇気はなく、バッグで隠すようにしてタクシーに乗り込んだ。

 タクシーが走り出してようやく肩の力が抜けた。

 首を回して窓外を見つめ、ホッとして息を吐く。

 日曜の朝の街はまだ眠っているようにひっそりとしていて、シャッターの下りた店先や人影のまばらな歩道が、ゆっくりと後ろへ流れていく。

 静かな街並みとは裏腹に、胸の奥だけがまだざわついて騒がしい。二日酔いなのか頭がズキッと鋭く痛み、顔をしかめた。

 まいったなぁ……まさか、あんなことになるなんて。

 ふいに昨夜の記憶が蘇り、頬に一気に熱がこみ上げて喉の奥がごくりと音を立てる。

 目をつぶってゆっくりと息を吐いた。

 でも、本当に私を好きだったの?
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