ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
『三年前から……ずっとこうしたいと思ってた』

 まるですぐそこにいるように、九条先生の声が鮮やかに蘇り耳が熱を持つ。

 ぞわぞわと胸の奥が騒ぎはじめて思わず身じろいだ。

 誠一郎さんとのときは、あんなふうに激しく感じたことは一度もなかった。
 九条先生はただ自分の欲望を満たすというよりも、私を昂らせることだけにひたすら専念していたように思う。

 あの唇、指先の動き……自分がどんな声を漏らしていたかを思い出し、いたたまれなくなってぎゅっと唇を結ぶ。

 失恋したばかりで、あんなことをしてしまうなんて。
 いや、そうじゃない。
 失恋したばかりだからこそ自分を見失っていたのだ。

 そうじゃなければ、独身の男性の部屋に上がりこんだりしないもの。いくらワンピースを汚したからといっても、シラフしらふならタクシーを呼んでまっすぐに帰ったはず。

 自己嫌悪から、そっとうつむいたまま額に手をあてた。

 ――でも大丈夫よ。九条先生とはもう会わないから。
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