ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!


 週明けから、私はひたすら仕事に打ち込んだ。

 悩みに呑み込まれないためには、目の前のことにただ集中する。それが私にとって一番の特効薬であり、唯一無二の対処法である。
 バイタルチェック、処置、申し送り、後輩の指導。手を動かしていれば余計なことは考えられない。患者さんの声に全神経を向けていれば、心の奥で苦しげに呻く黒い塊が暴れ出すこともない。

 もともと白石先生との交際は病院では秘密にしていて、打ち明けたのは小児病棟にいる親友の露子だけだ。

 あくまで医者と看護師として、廊下で顔を合わせれば軽く会釈をし、必要があれば事務的に言葉を交わす。そんなふうに距離を保ってきた。今後も同じようにするだけだ。彼の姿を視界に捉えるたびに胸の奥が痛んでも、気づかないふりをして前を向く。

 そう言い聞かせて踏ん張った。

 夕方六時。無事に日勤を終えて病院を出て、ホッと息を吐いた。

 長い一週間だったな。

 それでも一週間乗り越えられたのだ。よく頑張ったよと自分を励ます。

 徒歩十分。それが今の私の住まいと病院の距離だ。看護師になってすぐの頃は病院の寮に入っていたけれど、中堅と呼ばれる頃合いになると寮を出て一人暮らしをする人が多い。私もそのタイミングで近くにマンションを借りた。家賃補助が出るから、寮を出ても負担はそれほど変わらない。
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