ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 マンションのエントランスに入り、エレベーターのボタンを押して中に入ると、正面の鏡に自分が映った。ちょうどため息をついたところだったので、げっそりと疲れ切っているように見えた。

 それも仕方がないよと自分を慰める。泣きはらして腫れた目を冷やしたり温めたりしながら治して、何事もなかったように毎日仕事に行っているだけでも褒めたいくらいだ。

 そう思いながら、自分の部屋のドアを開ける。

 荷物を置いてホッとすると、スマートフォンが示すメッセージの着信に気づく。思わず顔をしかめて手に取ったわけは、送信元に心あたりがあるからだ。

【雪村さん、お疲れ様です。元気ですか? 今度のお休みいつですか? また会いたいです】

「もうー、なんなのよ」と人知れず毒ずく。

 送り主は九条凌久。

 よく覚えていないが、酔いに任せていつの間にかSNSの交換をしていたらしい。最初に連絡があったのは、彼のマンションから飛んで帰った日曜日の夜だった。
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