ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
ガムテープを剥がして蓋を開けると、ふわりと懐かしい藁のような香りが鼻腔をくすぐる。
中に入っていたのは、ずっしりと重い、精米したての新米の袋だった。
隙間を埋めるように、地元で採れた泥付きの大根や立派な栗、そして『体に気をつけてね。しっかりご飯を食べるのよ』と書かれた、母の少し丸っこい文字のメモが添えられている。
離れて暮らす娘を心配して、母はこうして季節ごとに定期的に荷物を送ってくれるのだ。
さっそくスマートフォンの画面に指を滑らせた。電話でお礼を伝えなければ。
呼び出し音に耳を澄ましていると、程なくして『はーい』と明るく母が電話に出る。
「あ、お母さん、お米届いたよ、ありがとう。ちょうど切らしそうだったからすごく嬉しい」
『あら、無事に届いて良かった。深結、ちゃんと自炊してる? 声が少し疲れてるみたいだけど、仕事忙しいの?』
電話の向こうから聞こえる母ののんびりとした優しい声に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「ううん、元気だよ。……あのね、お母さん。ちょっと報告があって電話したの。私ね、新しい病院に転職するかもしれないんだ」
『えっ? 転職?』
母の声が少し上ずり、心配そうなトーンに変わる。
「うん。今度のところはすごく福利厚生がしっかりしていて、看護師の待遇も良いの。だから思い切ってステップアップしようと思って。それでね、転職が決まったら今のマンションを出て、新しい病院が用意してくれる借り上げの社宅に引っ越すことになるの。その書類の手続きとかで……ちょっとバタバタしちゃうかもしれない」
黙って引っ越すわけにはいかないからと、意を決して伝えた言葉に、母はしばらく沈黙したあと、探るように静かに聞いてきた。
『……転職なんて急に、何かあったの? あっちの病院で、辛いことでもあった?』
「そんなことないよ、本当に前向きな転職だから」
『でも、深結……。前にいい人がいるって教えてくれたじゃない? 同じ病院の――』
恐れていた質問が飛んできて、喉の奥がキュッと詰まる。誠一郎さんとの交際を匂わせてしまっていた過去の自分が恨めしかった。
中に入っていたのは、ずっしりと重い、精米したての新米の袋だった。
隙間を埋めるように、地元で採れた泥付きの大根や立派な栗、そして『体に気をつけてね。しっかりご飯を食べるのよ』と書かれた、母の少し丸っこい文字のメモが添えられている。
離れて暮らす娘を心配して、母はこうして季節ごとに定期的に荷物を送ってくれるのだ。
さっそくスマートフォンの画面に指を滑らせた。電話でお礼を伝えなければ。
呼び出し音に耳を澄ましていると、程なくして『はーい』と明るく母が電話に出る。
「あ、お母さん、お米届いたよ、ありがとう。ちょうど切らしそうだったからすごく嬉しい」
『あら、無事に届いて良かった。深結、ちゃんと自炊してる? 声が少し疲れてるみたいだけど、仕事忙しいの?』
電話の向こうから聞こえる母ののんびりとした優しい声に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「ううん、元気だよ。……あのね、お母さん。ちょっと報告があって電話したの。私ね、新しい病院に転職するかもしれないんだ」
『えっ? 転職?』
母の声が少し上ずり、心配そうなトーンに変わる。
「うん。今度のところはすごく福利厚生がしっかりしていて、看護師の待遇も良いの。だから思い切ってステップアップしようと思って。それでね、転職が決まったら今のマンションを出て、新しい病院が用意してくれる借り上げの社宅に引っ越すことになるの。その書類の手続きとかで……ちょっとバタバタしちゃうかもしれない」
黙って引っ越すわけにはいかないからと、意を決して伝えた言葉に、母はしばらく沈黙したあと、探るように静かに聞いてきた。
『……転職なんて急に、何かあったの? あっちの病院で、辛いことでもあった?』
「そんなことないよ、本当に前向きな転職だから」
『でも、深結……。前にいい人がいるって教えてくれたじゃない? 同じ病院の――』
恐れていた質問が飛んできて、喉の奥がキュッと詰まる。誠一郎さんとの交際を匂わせてしまっていた過去の自分が恨めしかった。