ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「あ、あのね、お互いに本当に仕事が忙しくて。――ううん、それより新しい病院ね、すごく綺麗な病棟なんだって。福利厚生が充実していて。後輩が誘ってくれたの」

 白石先生さんの話題にならないよう、早口で話を遮り、無理やり話題を変える。
 私の必死な様子を察したのか、母はそれ以上は深く追及してこなかった。

『そう……。よかったわね。でも、無理しちゃダメよ。引っ越し手伝いに行こうか?』

「大丈夫だよ、たいして荷物はないから。ありがとう。また落ち着いたら連絡するね」

 通話を終えてスマートフォンをベッドに置くと、部屋の中に静寂が戻ってきた。

 深く、ゆっくりと息を吐き出しながら、私は膝を抱えてぽつりと呟く。

「……ごめんね、お母さん。心配かけて」

 ぽろりと零れ落ちた言葉と一緒に、肩が落ちていく。
 親を安心させたくて東京に出てきたのに、こんなふうに嘘を重ねて心配をかけるなんて、本当に不甲斐なくて、唇を噛んだ。

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