ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
びっくりしたのはこっちだ。
「九条先生が教えてくれたんです。研修医の頃にお世話になった先輩だって」
「あ……うん。ひなちゃんが辞めた後、大学病院に来たのよね」
彼とひなちゃんはちょうど入れ違いだった。
「九条先生凄いんです」とひなちゃんはうれしそうに続ける。
「去年から役員として経営のほうに携わっていらしたんですけど、先生の提案で看護師の待遇が改善されたんですよ。ユニフォームの支給枚数とか、クリーニング代とか」
ん? その話って。
「以前お世話になった看護師の方から話を聞いて、そうしたって」
箸を持ったまま、固まった。
ユニフォームは二枚しか支給されない。私たちの給料からすればユニフォーム代は決して安くない――彼がまだ研修医だった頃、廊下で彼にぶつけるように言った言葉が脳裏に蘇る。
まさか、本当にあのときの話を気にしてたの?
「その看護師って、もしかして、深結さんじゃないですか?」