死んだ大好きな君を3月14日までに救いたい

2月13日

 2月13日。
 外の空気は冷たくて息が凍りそうだ。

ーーガラガラ。

 窓を閉めてモコモコ靴下を膝下まで伸ばす。
 そして、スマホの画面を見つめながら、打ち込んだメッセージを消しては書いて、また消して。
 学校から帰宅すると、この状態が一週間以上続いている。

<桜庭美桜:明日の放課後、話せない?>

 美桜は、幼馴染の律に明日の2月14日にチョコレートを渡す。
 「義理チョコだからね」と毎年渡しているが、今年こそは「本命だよ」と渡す決心をしたのだ。
 なぜなら去年。
 中一のバレンタインデーの日。
 律の机上はすごいことになっていた。
 今にもこぼれ落ちそうなほどのチョコの山。

「白谷律は学校の黒王子」

 漆黒のサラサラした髪。
 長い前髪からのぞくキリッとした目。
 バランスのいい顔のパーツとスッと通った鼻。
 中学の入学式からそう異名がつけられ、イベントのたびに告白の嵐。
 バレンタインデーは、その最高潮とも言える日と化した。
 残念ながら、去年はその中から律とお付き合いができた勝者はいなかったけれど、その場面を目の当たりにして美桜は気づいたのだ。
 ーー自分の気持ちに。
 そして、中ニのバレンタインデー・明日。
 告白すると決めていた。

 学年末テストを翌週に控えているので、明日の放課後は全部活が休みだ。
 もしかすると、黒王子・律は、明日のバレンタインデーにすでに予定が入ってしまっているかもしれない。
 そう思って、美桜は2月上旬から「2月14日の放課後の予定を空けておいて欲しい」と何度も伝えようとしていた。
 だが、喉まで出かかった末、とうとう今日まで言えなかったのだ。

「さすがに今日伝えておかないとだよね。でも予定があったらどうしよう……」

 いつもは強気の美桜も、今日ばかりは弱気になる。
 小学一年生から毎朝一緒に登校していて、何でも話せる関係なのに、恋の話となるとてんでだめだ。
 中学に入ってからは、律の口数が少なくなって美桜が一方的に話すだけの朝の30分。
 律には一度「毎朝一緒に行かなくてもいいよ」とツンとしてみたことがある。
 だが、律はうんともすんとも言わずに、毎朝7時45分にミオの家の前にやってくるのだ。

「ここまできたらもう玉砕しよう! えいや!」

 美桜がポコンとメッセージを送る。

<桜庭美桜:明日の放課後、話せない?>

 すると、すぐに既読がついた。
 わ!
 もう見たの!
 少ししてから返事が届く。

<白谷律:りょーかい。俺もちょうど話したいことあったから>

 ふぅ。
 明日、律は予定がなかったということに安心する。
 朝、登校する前に振られたらさすがに耐えられないので美桜は放課後、律に気持ちを伝えることにした。

「明日予定ないってことは、まだチャンスあるよね!」

 美桜は部屋のベッドの上で足をバタバタさせる。
 期待に胸が膨らむ。
 でも、次の瞬間には「でも今まで何もなかったし……」と気持ちが沈む。
 そうやって気分を上げたり下げたりしているうちに、当日の朝を迎えてしまった。
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