トップホストを辞めたイケメンが、いきなり私の専属編集者になるなんて聞いてない!
 私が冗談めかして言うと、光くんは私のジョークに笑って応じた。

 「いいですね……あなたがいないと、僕はダメになっちゃう」

 光くんが人差し指で私の前髪をそっと優しく払った ///////////

 「か……彼……光様」

 もう、こんなの顔なんか見られない。

 「それで光くんは? 最近どう?」

 「元気ですよ……いつも通り」

 今日は彼の表情がいつもと少し違う……聞いてみるべきかな。

 「光くん……今日はなんか変だよ」

 光くんは少し目を大きく見開いた……が、笑顔でごまかした。

 「別に。気にかけてくれてありがとうございます」

 中学生の時からずっと人間の表情を描いてきた私には、彼が何かを隠しているのがすぐに分かった。でも深く詰問するつもりはない。彼の私生活に首を突っ込むようなことじゃないから。

 「そう? 光くん、私に手伝えることがあったら言ってね」

 相手は意味ありげに笑って、また私の手の甲にキスをした。

 「はい、喜んで」

 私は酒に強いほう……だから光くんと飲み続けて、店が閉まる時間までずっと飲んでいた。

 「ねえ、光くん」

 タクシーを待つ間、光くんは店の前のタクシー乗り場まで送ってくれた。

 「なんですか、花さん」

 「今日のあなた……寂しそうだよ」

 「え?」

 「踏み込みすぎだったらごめんね。でも私、誰かの顔を見たらすぐ分かっちゃうの」

 偶然手に入れた能力。私の職業がくれたものだ。

 「…………」

 彼はしばらく黙っていたが、かすかな声で答えた。

 「僕、明日からこの仕事を辞めるんです。新しい仕事も決まったので」

 私はどうしていいか分からないほど呆然としたが、そのまま気まずい沈黙にはしなかった。

 「辞めるの? いいね。でも、もうあなたに会えないってこと?」

 「そうなりますね」

 私……胸が痛んだ。彼がこんな仕事をしているのは分かっていたのに、なぜか彼にも、店の全員にも愛着を感じていたんだ。

 今日が彼と会う最後の日。光くんと会う最後の日。

 「ねえ、光くん」

 「はい?」

 私は彼の顔を見つめ、光くんの手を強く握った。

 「今夜……私と一緒に帰らない?」

 せめて最後の日くらい

 もう一度彼と近づきたかった。

 タクシーが私のマンションに停まった。寝る場所でもあり仕事場でもあるマンション。

 華奢な体が柔らかなベッドに落ちていく……

 光くんの大きな体が天井のネオンの光を遮り、私の息と彼の息が重なる。

 「……」

 男の人とこういうことをするのは初めてで、正直ちょっと緊張している自分もいる。

 「準備いい?」

 彼が私を見つめる。ああ……その目がとても色っぽい。

 「うん……じゃなきゃ、ゴムを三箱も買ってこないよ」

 体が痛くなって、それから気持ちよくなった。

 血が出たのも分かったけど、止められなかった。

 ぶつかり合う唇、絡み合う舌と唾液。

 ぶつかり合う筋肉の衝撃。

 私と彼の小さな声が少しずつ大きくなっていく。

 その夜、私と光くんは二人だけの一時の恋の中で互いを抱いた。

 ああ……ああ、行ってほしくない。

 「もう一回いい?」

 「うん」

 ある感情が少しずつ私の中に生まれていく。今の私が彼に抱いている感情。

 なんて短い夜なんだろう。
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