きみが待つ空へ ~敏腕パイロットは命をかけて愛を守る~
「キャプテン。乗客197名、全員搭乗完了しました」
 コクピットで報告を受け、俺は頷いた。
 搭乗名簿に載った乗客が全員揃ったということは、美桜もこの機に乗っているはずだ。
 ……よく、ここまでたどり着いてくれた。
 安堵がこみ上げ、彼女の顔が浮かぶ。
 今すぐ、無事な姿を確かめたい。
 けれど、再会を喜ぶのは全員を安全な場所へ送り届けてからだ。
 気持ちを切り替え、計器に目を向ける。
 管制官の指示に従って機体を滑走路へと進めた。
 窓の外では、各国の救援機が次々と離陸していく。
 乗客の搭乗に30分かかってしまったため、出発は予定より遅れていた。
 20時までに、イラードの領空を抜けなければならない。
 一刻の猶予もなかった。
 
『Cleared for takeoff』
 無線から管制官の離陸許可が聞こえた。
 俺はスラストレバーを押して、エンジンの出力を上げる。
 機体が加速し、速度計の数字が駆け上がっていく。
「ブイワン」
 副操縦士の声が響く。続いて、
「ローテート」
 コールを受けて、俺は操縦桿を引いた。
 機首が持ち上がる。

 ――美桜。
 必ず、きみを守り抜く。
 やがて、車輪が滑走路を離れた。
 ――さあ、行くぞ。
 俺は、操縦桿を握り、前方を見据えた。
 タイムリミットまでに、領空を抜ける。
 そのためには、ここから先、ひとつの判断も誤るわけにはいかなかった。
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